独学での行政書士試験合格法(初学者向け)

ノウハウ

前の投稿で行政書士試験攻略法という記事を書きましたが、今回は、独学での行政書士試験合格法を述べたいと思います。あくまでも、行政書士試験合格者である私からの提案、1つの案であり、これで絶対合格できるというわけではありませんが、ただ、実践ができれば合格の可能性がかなり高まることは間違いないでしょう。

その実践方法を大まかに述べると、

①初学者向けテキストを読む
②基礎テキストと行政書士試験問題集を同時並行にて勉強
③司法試験の問題集をこなす

という三段階を経て合格を目指す方法となります。

以下に説明していくよ

はじめに

この投稿は、これから「行政書士試験を受験したい」「合格したい」と思っている法律初学者の方が、独学の1年間で行政書士試験に合格するためのスケジュール案・勉強の進め方・コツを示しています。行政書士試験受験経験者などの中級者以上の方も参考にしていただければ幸いです。また、個別にどのテキスト・問題集がよいのか提示はいたしませんが、どのようなタイプのテキスト・問題集を選ぶべきかの提案はいたします。

ちなみに、1年間という期間ですが法律初学者がで独学で行政書士試験に合格しようと思えば、このぐらいの期間が最低限必要となります。よく、資格試験予備校で「半年で合格」「3ヶ月で合格」といったキャッチフレーズを掲げているところがありますが、それは、司法試験受験経験者・司法書士試験受験経験者・有名大学法学部卒といった前提がある場合になります。そういった前提がなく合格するためには最低でも1年間は必要です(それでもギリかな(;^ω^))。

行政書士試験概要

まずは、行政書士試験の概要について話します。行政書士試験がどのような試験であるか、まずは概要を掴むことが非常に重要です。この概要は勉強期間から試験当日に至るまで、行政書士試験対策の基本となるため徹底的に頭に入れてください。

行政書士試験は例年11月の第2日曜日に行われます。試験時間は午後1時から午後4時までの3時間の試験で、試験に出る法律は憲法・行政法・民法・商法(会社法含む)の4科目の他、法学全般にわたる基礎法学になります。他にも一般知識と呼ばれる法律以外の問題もでます。

問題の内容は法令等の5肢択一式(択一式:5つの選択肢の中から正しいもの、もしくは誤っているものを選びマークシートで解答するもの)、法令等の多肢選択式(空欄にあてはまる正しい語句を選ばせるもの)、法令等の記述式(設問に対して40文字前後で解答するもの)、一般知識の5肢択一式という内容になります。

そして、下の図が各法律科目の得点配分と合格基準となります(令和元年度試験基準)。

行政書士試験得点配分

この表を簡単に説明すると、一般知識問題で足切りを食らわないよう4割(24点)以上を取り、全体として6割(180点)以上取れば合格ということですです。また、行政法と民法の配点だけで合格ラインを超える188点もあり、この2科目を極める試験であることがわかります。

全体スケジュール

以上を踏まえての、合格のためのスケジュールが以下となります。

タイムスケジュール

この表の見方を説明します。矢印の長さと色が勉強する期間とテキスト・問題集の内容となり、矢印の下にあるパーセンテージは勉強をする比率となります。例えば、12月に1日5時間勉強した場合、憲法を30分(10%)、民法を2時間(50%)、行政法を1時間半(40%)という目安でしましょうということです。行政書士試験は出題される科目の比率が違うので科目ごとの勉強時間、つまり、力の入れ方を調整する必要があります。

非常にタイトなスケジュールです(;^ω^)。仕方がありません、1年間という期間はそれだけ厳しいということです。合格を目指す方はこの1年間は、趣味・娯楽・人との付き合いを減らさざる得ないことを覚悟しましょう。目安としては、平日1日3時間、休日は5時間の勉強時間を取れるようにしましょう。

そして、以下に時期ごとの勉強の進め方を示します。

序盤3ヶ月

まずは六法全書を買いましょう。六法全書の選び方と使い方は、この過去記事をご覧ください。

※関連記事

六法全書を購入したら、最初の3ヶ月はとにかく法律に慣れる期間になります。この時期はまだ「勉強するぞー」「おぼえるぞー」と気合を入れなくても大丈夫です( ´∀` )。まずは法律の雰囲気を掴みましょう。

タイムスケジュール

まず最初の1ヶ月である11月は、憲法から勉強を始めます。すべての法律は憲法が基礎となります(この理由は勉強をすすめればわかります)。まず、憲法を学びましょう。そうすると、このあとの民法・行政法の理解が深まります。

あと、使うテキストは入門書的なものがいいでしょう。それこそ「初めての憲法」「小学生でもわかる憲法」みたいなものでも大丈夫です。

そして12月から、民法と行政法を始めます。この月は、民法を50%、行政法40%、憲法10%の割合で勉強しましょう。前述しましたが行政書士試験の配点の6割以上は民法・行政法です。この2科目をここから徹底的に磨くことになります。使うテキストは憲法同様に入門書的なものから始めましょう。

1月からは、憲法の割合を減らし、民法を50%、行政法45%、憲法5%の割合で勉強します。なぜこのように細かく勉強時間の比率を指定するのかというと、あるスタンスを身に付けるためです。何度も言いますが、行政書士試験合格のためには民法・行政法を徹底的に磨く必要があります。そのため、民法・行政法をメインで勉強しつつ、うまいこと他の科目もカバーするというスタンスを身に付ける必要があるためです。そのスタンスをこの時期に身につけましょう。

※また、初学者でもわかりやすい法律用語集を作成しました。参考にしてください。

中盤4ヶ月

中盤に突入です。ここから本格的な勉強を始めていきます。少し気合いを入れてがんばっていきましょう( ´∀` )。

タイムスケジュール

2月に入り、入門書から行政書士試験のテキスト・問題集へと切り替えます。行政書士試験のテキスト・問題集はいろいろな所から出ていますが、どれも内容は大きく変わりません。ですので、本屋さんに行って実物を見て、「見やすい」とか「わかりやすそうだ」とかで選べば大丈夫です。自分もそうでした。それにテキストのほうに自分から合わせるようになります。要は慣れてきます。

そして、民法40%、行政法30%と、この2科目は相変わらず高い比率を保ち、憲法も10%としっかりやっておきましょう。憲法は基本であるし、28点の配点があるので捨てることはできません。

ここからの勉強方法はテキストを読むだけではなく、どんどん問題を解いていきましょう。時間がないので実践あるのみです。問題を解きながらテキストを理解するぐらいの感じでちょうどいいと思います。

さらにここから商法の勉強を20%で始めます。商法も合格のためには5問中2.3問は取りたい科目なので早めに手を付けます。また、商法の勉強をすると民法の理解が深まるという相関関係もあります。前3ヶ月と同様にテキストは入門書から始めましょう。

※参考記事

3月は、行政法を40%と引き上げ、商法を10%に下げます。

4月5月は、商法を行政書士試験用のテキスト・問題集へと切り替えます。そして、基礎法学を追加します。基礎法学は何を勉強すべきか断定はしずらい部分ではありますが、刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法のいわゆる司法試験科目の入門書を読んでおくといいと思います。このあたりの基本概念が出されることが多いためです。そして、商法・基礎法学ともに5%と控えめな比率とします。他の科目の勉強を圧迫しないためです。電車で移動中に読むとか、民法・行政法の勉強の合間に、気分転換くらいでやるといいでしょう。

そしてここで、一般知識の勉強を始めます。実は、一般知識問題は行政書士試験受験者にとって大きな鬼門となっています。それは、なにが出題されるかわからない部分が大きいためです。法律とも政治経済ともつかないような難問奇問を平気で出してきます。大手の資格試験予備校が予想問題などを出しますが、たいがい外れます。そんな中、範囲は広いものの政治経済の問題は例年5問ほどだされる傾向があるので、ここにターゲットを絞り公務員試験の政治経済に関する問題をやるといいでしょう。

また、時事問題が出されることが多いので、公務員試験の問題集はなるべく最新のものを選びましょう。さらには、普段からニュースをチェックして知らない政治経済用語が出てきた場合はググりましょう。あと、文章理解(いわゆる現国)の問題が3問出されます。自分にとってはサービス問題でしたが、現国が苦手という人は大学入学共通テストの現国をやってみるのもいいかもしれません。一般知識は6問取れず足切りで泣いた人が多い(法律科目を一生懸命勉強してきたのが無に帰す)ので、基礎法学よりはしっかりとやる必要があります。

※参考記事

終盤5ヶ月

ついにラスト5ヶ月です。ここからは試験当日まで息切れしないよう全力で駆け抜けましょう。健康にも留意してください。もちろん、勉強時間は取れるだけ取りましょう。

タイムスケジュール

ここからは、科目ごとではなく問題のタイプごとに勉強の比率を変えます。

まず、行政書士試験の過去問題集を30%やります。過去問題集は各社より過去5年分のものが市販されていることが多いです。問題集の内容は過去問なので当然どこも同じですが、法令改正に対応しているものを選びましょう。古い年度の過去問は現在の法令にそぐわない可能性があります。

ですので、「法令改正対応」とか「ホームページにて修正情報あり」と謳っている過去問題集を買いましょう。あとは値段や見やすさで選べば大丈夫です。そして、本番までには5年分を1周はさせましょう。

次に、記述式のみの問題集を30%やりましょう。記述式は行政書士試験受験者が最も不安に駆られる部分です。もし、3問とも苦手な領域が出題されれば、1文字も書けないということもあり得るからです。だから多くの受験者が「苦手なところがでたらどうしよう」「知らないところがでたらどうしよう」と((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルしています(特に試験の直前)。

このようにならないためにも、記述式のみの問題集をこなして記述式に慣れましょう。記述式に慣れれば、知らない問題をだされても推測と応用で何か書けるようになります。本番で白紙解答は絶対にダメです。何か書いて、それが少しでもかすっていれば年度によっては部分点をもらえる場合があります。

ちなみに、記述式3問は例年、①基本的で書きやすいもの、②難易度は高いが何とか書けそうなもの、③高難易度でまったく書けないもの、この3パターンが出題される傾向にあります。そこで、

①基本的で書きやすいもの確実に書いて15~20点狙い。

②難易度は高いが何とか書けそうなもの大筋を外さずに書いて5~10点狙い。

③高難易度でまったく書けないもの推測と応用で白紙にはせず、なんとか書く(うまくかすれば)0~5点狙い。

という感じで、トータル30点を目指すのがよいでしょう。

記述式の問題集はあまり分量が多い(厚い)ものは避け、適度な分量のもので本番前には1周はさせましょう。

ちなみに、私自身で記述式の予想問題を作成してみたので、よろしければ利用してください。

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そして最後に、合格への決定打として司法試験・予備試験の択一の過去問を40%やります。過去記事の行政書士試験攻略法で述べていますが、司法試験・予備試験の過去問をやることにより一気に合格レベルまで引き上げることができます。「司法試験・予備試験の過去問?難しそー(;’∀’)」と思われるかもしれませんが、大丈夫です。やってみると案外解けます。行政書士試験の難易度が上がっているからです。

実際、行政書士試験合格後に司法試験にチャレンジ、そして合格したという人も結構います。でもやはり、司法試験の問題のほうが1段階ぐらい難易度は高いです。逆にそれを利用してレベルアップを図るのです。

さらに、司法試験の問題をやることのメリットはまだあります。それは、記述式の対策になるということです。司法試験は約3枚分の論文を書く試験です。そのため、法理論(いわば理屈)を中心に勉強します。この法理論を勉強すると「この法律が存在するのには、こういった理由があるため、このように適用する」という法の考え方(流れ)がわかるようになり、記述式での文章も起こしやすくなります。知らない問題をだされても法理論からの推測と応用でアウトプットができるようになるということです。また、試験合格後の実務においても役に立つでしょう。

あと、司法試験の択一問題集は民法・行政法の2科目のみをやりましょう。それ以上手を広げるのは無理です。出されている問題集はぶ厚い(分量が多い)ものばかりですが、5ヶ月という短い期間でもできそうな、なるべく薄いものを探しましょう。それと同時に、民法・行政法の司法試験用の基本書も揃えるといいと思います。

最後に

以上が私からの提案となります。ここで示した計画はあくまでも私からの提案・指標となります。

実際には、実行するのが難しかったり、思ったより勉強を進めることができないこともあると思います。だからといって、合格できないことはないと思います。自分に合ったペースや配分で臨機応変に勉強していくことが最終的には大切であり、継続が一番重要になります。

しかし、やってみて「独学では厳しい!」と感じることもあるでしょう。その時は、資格試験予備校の利用を検討してもいいでしょう。

※参考記事

最後に、行政書士試験は合格率10%前後の難易度が高い試験です。初学者にとっては1年間という短い期間は非常に厳しいでしょう。ただ、司法試験などでは才能やセンスが問われるような感じがありますが、行政書士試験は正しく努力を続けていれば必ず合格できる試験です。

頑張りましょう( ´∀` )