行政書士試験のための法律用語集(あ行)

法律用語集

行政書士試験に限らず法律の勉強をしていると、わからない用語が出てきて手が止まってしまうことがあります。そのままスルーして勉強を続けるのもひとつの手ですが、わからないものをずっと放置しておくのは後の理解度に影響を及ぼすこともあります。

なぜならば、法律は数学と同じだからです。つまり、四則演算ができなければ微分積分が理解できないことと同じで、「意思表示」「善意」といった言葉の意味がわからなければ判例や法理論を理解することはできないためです。よって、わからない用語が出てきた場合はその都度調べて、意味を知り、理解をした方がいいです。

そこで、なるべくスムーズに法律用語を理解し、勉強がはかどるようにと法律用語集を作成してみました。参照していただければ幸いです。

まずは、「あ行」のページになります。

注:条文を参照したい場合は、こちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/

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悪意(あくい)

<民法>

【対義語】善意

知っていたこと。

その事実を知っていながら、あえて法律行為を行った場合を言います。典型的なのは、通謀虚偽表示による仮装譲渡(民法94条2項)にて、移転登記された不動産をその事実を知っていながら(思で)取得してた場合などです。 この場合、悪意の者は保護されません(不動産を取得できない)ことになります。

Aさんが所得隠しのため所有している甲不動産を、Bさんと話し合って、Bさんの所有としてしまうこと。こうすると、Bさんの財産ということになり、Aさんは強制執行される(取り上げられる)ことがなくなる。

通謀虚偽表示による悪意の取得者
民法94条2項と悪意の取得者

よく、「普段の生活で使う”悪意”とはニュアンスが違うので気をつけましょう」といわれます。

安全配慮義務(あんぜんはいりょぎむ)

<民法、労働契約法、国家賠償法>

「雇い主は、雇っている人の健康と命と安全を守らないといけないよ!」ということ。

雇用関係において雇用主が負う義務で、労働契約法5条にも明文で規定されています。また、直接的な雇用関係にはない請負契約にも適用される他、国と公務員といった関係にも適用されます(昭和58年5月27日判例:裁判所ウェブサイト)。

そして、安全配慮義務を怠ると安全配慮義務違反として損害賠償責任を負うことになります。

意見公募手続(いけんこうぼてつづき)

<行政手続法>

【別称】パブリックコメント

「みんなの意見を集めて、それを政治の運営に役立てようよ!」という制度。

行政手続法39条に規定される制度で、行政機関が命令等を定める場合に、事前にその案を公表をして様々人たちから意見をもらい、それを参考にするというものです。

ただし、あくまでも十分考慮(参考)するだけ(行政手続法42条)で、実際に意見に縛られるわけではありません。

パブリックコメント

意思表示(いしひょうじ)

<民法>

意思を表示すること(まんまやん!(# ゚Д゚)/)。

もう少し詳しく説明すると(;^ω^)、法律的に有効な意思を表示すること。たとえば、「これ買います!」は法律的に有効な意思表示ですが、「これ欲しいなー」は法律的に有効ではない意思表示となります。

つまりは、権利を欲している絶対的な意思のあらわれが意思表示となります。具体的には、申込や承諾などになります。

一般財団法人(いっぱんざいだんほうじん)

財団法人を参照。

委任命令(いにんめいれい)

<憲法>

【関連用語】執行命令

法律の細かい部分を埋めるもの。

法律は、だいたい大枠だけが定められていることが多いです。すると、「で、具体的には?」となるので、その具体的な部分を埋めるものになり、行政立法の種類の一つになります。

国家公務員法第百二条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

この人事院規則が委任命令にあたります。「法律の委任で私人の権利義務の内容自体を定めるもの」と定義されています。

委任命令

訴えの利益(うったえのりえき)

<行政事件訴訟法>

裁判をする意味があること。

取消訴訟において訴えを提起できる資格がある(原告適格)、または、取消をしてもらう必要性がある(狭義の訴えの利益)という両方を指します。

営業の自由(えいぎょうのじゆう)

<憲法>

好きな仕事をして稼げる自由。

「営業の自由」は、憲法22条の「職業選択の自由」の内に含まれるとするのが通説になっています。なぜならば、好きな職業を自由に選べたとしても、実際にその職業で自由に商売をして稼げることができなければ意味が無いためです。

この点、昭和47年11月22日判例(裁判所ウェブサイト)において「職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきであり」と判示しています。

公の営造物(おおやけのえいぞうぶつ)

<国家賠償法>

国や公共団体が提供している、みんなで使える施設または物。国家賠償法2条1項に規定されています。

公の営造物の例を挙げると、道路・図書館・公園(設置されている遊戯具も含む)・車など例を挙げたらきりがないですが、有体物(形あるもの)に限られ、人的資源や電気またはデザインといった無体物(形なきもの)は対象ではありません。

公の施設(おおやけのしせつ)

<地方自治法>

地方公共団体が住民サービスのために提供する施設。

道路、学校、公営住宅、図書館等その範囲は幅広いですが、当該地方公共団体の敷地内でなくとも成立します。

例えば、東京都世田谷区が長野県軽井沢町内に世田谷区民が利用できる保養施設を所有していた場合、それは”世田谷区の公の施設”ということになります。

公の秩序(おおやけのちつじょ)

<民法>

世の中の人々にとって「いいね!👍」といえるもの。国家・社会の一般的利益といわれます。

民法90条にて「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と規定されていて、この「の秩又は善の風」をあわせて公序良俗(こうじょりょうぞく)といいます。

そして、この公序良俗に反する行為は迷惑なので無効とされます。要は、法律で保護されないわけです。

有名な判例として、ギャンブルのために金を貸しをした行為が公序良俗に反するとされたものがあります(昭和61年9月4日判例:裁判所ウェブサイト)。