行政書士試験のための法律用語集(な行)

法律用語集

行政書士試験に限らず法律の勉強をしていると、わからない用語が出てきて手が止まってしまうことがあります。そのままスルーして勉強を続けるのもひとつの手ですが、わからないものをずっと放置しておくのは後の理解度に影響を及ぼすこともあります。

なぜならば、法律は数学と同じだからです。つまり、四則演算ができなければ微分積分が理解できないことと同じで、「意思表示」「善意」といった言葉の意味がわからなければ判例や法理論を理解することはできないためです。よって、わからない用語が出てきた場合はその都度調べて、意味を知り、理解をした方がいいです。

そこで、なるべくスムーズに法律用語を理解し、勉強がはかどるようにと法律用語集を作成してみました。参照していただければ幸いです。

今回は、「な行」のページになります。

注:条文を参照したい場合は、こちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/

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内縁(ないえん)

<民法>

【別称】事実婚(じじつこん)

結婚(婚姻)の形をとっていない男女の関係。

通常であれば、”恋愛から結婚”という流れのカップルが大多数ですが、中には結婚という形をとらずに夫婦のような関係を築くカップルもいます。

当然そのような形をとることは当人同士の自由ですが、相続権(民法890条)を得られない等の法律的デメリットが生じてきます。それゆえ、昔から内縁関係のトラブルはよく生じます。

ただ、内縁関係といえども、同居しているなどの婚姻関係と変わらないような生活実態があるので、内縁は法律上の婚姻に準ずる昭和33年4月11日判例:裁判所ウェブサイト)ものとして、内縁関係の者にも、なるべく配偶者と同じ権利を与えるようにするというのが判例の考え方となっています。

内閣(ないかく)

<憲法>

行政運営のトップ組織。

特に、警察・自衛隊等のを動かす組織であるため、立法権・司法権に比べてその力は強大です。なので、憲法では行政権(内閣)をより強く縛る形で条文が規定されています(憲法66条3項、67条1項、68条1項、69条、70条、72条、76条2項、78条)。

つまりは、行政権(内閣)を強力に縛ることにより三権分立における三権のバランスをとっているのです。

そして、この内閣のリーダー(長)が内閣総理大臣になります(憲法66条1項)。

内閣総理大臣(内閣総理大臣)

内閣を参照。

内閣府(ないかくふ)

<内閣府設置法>

内閣をサポートする仕事を行う行政機関。

内閣府設置法2条1項で「内閣府は、内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。」と規定されています。

具体的には、「国家公安委員会」や「消費者庁」といった組織が内閣府の所管となります。

軟性憲法(なんせいけんぽう)

<憲法>

【対義語】硬性憲法

コロコロと変えることができる憲法。

法律と同じように変化させることができる憲法を軟性憲法といいます。法律の変更が議会の半分の賛成で決定するならば、憲法の変更も同じく議会の半分の賛成で決定するような憲法です。

軟性憲法は変えやすいので、時代の変化に柔軟に対応できますが、憲法が持つ”絶対的価値”が歪められやすくなる危険性も持ちます。

二重譲渡 ・認可 ・認知

二重譲渡(にじゅうじょうと)

<民法>

一人の人間が二人以上の人間に1つしかないものを売ること。

具体的には、鈴木さんが所有する1筆の土地(1つの不動産)を佐藤さんと田中さんの両方に売却してしまうような場合です(たぶんその後、鈴木さんは雲隠れするでしょう(;^ω^))。

このような場合、その土地が佐藤さんと田中さんのどちらのものになるかは登記の有無によって決まります(民法177条)。

認可(にんか)

<行政手続法>

役所からお墨付きをもらうこと。もしくは、役所がお墨付きを与えること。

例えば、1区間130円でバスを運行しているAバス会社が「来年春からは1区間140円に値上げ(料金改定)したい」という場合は、道路運送法9条の2第1項に従い国土交通大臣から認可(お墨付き)を受けなければいけません。

そして、認可を受けたAバス会社は新たな料金にて利用者と契約(法律行為)ができるというわけです。 これは、「法律行為の効力を補充して完成させる行為」と定義されてます。

なお、許可や免許と合わせて「許認可等(きょにんかとう)」(行政手続法2条3号)と呼ばれます。

認知(にんち)

<民法>

父親が「この子は俺の子だ!」と認めること。

例えば、既婚者の父親が愛人に子供を産ませた場合に、その子供を自分の子供だと認めるような行為を認知といいます。そして、認知は届け出ることにより成立する要式行為となります(民法781条)。

認知をすると、その子供は相続人としての権利を得ますので、認知は権利関係に影響を及ぼす重要な行為となります。

ちなみに、母親も認知できますが(民法779条)、もともと自分がお腹を痛めて産んでいる事実がありますので、母方の認知はあまり問題になりません。

根抵当権(ねていとうけん)

<民法>

不動産を担保にして何度も返済と借入を繰り返せる抵当権

どういうことかというと、通常の抵当権であれば「不動産を担保にお金を借りる→返済する→抵当権が消滅」というように一回限りの借入と返済が通常です。

ですが、根抵当権の場合は「不動産(1000万円の価値)を担保にお金を借りる→800万円返済する→また、300万円借りる→400万円返済する→・・・」といった感じで、1000万円を超えない範囲で複数回の借入と返済を繰り返せるものになります。そして、この場合の1000万円を極度額と呼びます。

根抵当権説明

つまりは、根抵当権は事業を営む人などが定期的に事業資金を調達するといった場合において、非常に使い勝手の良い抵当権ということになります。

農地転用(のうちてんよう)

<農地法>

【略称農転(のうてん)

農地を農地以外(宅地等)にすること。

そんなもの勝手にやればいいじゃん!と思われるかもしてませんが、そうはいきません。

なぜならば、農地を宅地に変更するというような土地の利用目的(地目という)の変更には制限がかけられているからです(農地法5条)。この制限の目的は農業生産の安定のためです。

そして、この制限を撤廃し、農地を別の地目へと変更することを農地転用と言います。この農地転用をすることにより、やっと家を建てる(宅地にする)ことができるのです。

農地転用

ちなみに、農転の許可申請は行政書士の鉄板業務なので、試験に出題されることがなくとも「農地転用」という用語は知っておいて損はないです。