行政書士試験に限らず法律の勉強をしていると、わからない用語が出てきて手が止まってしまうことがあります。そのままスルーして勉強を続けるのもひとつの手ですが、わからないものをずっと放置しておくのは後の理解度に影響を及ぼすこともあります。
なぜならば、法律は数学と同じだからです。つまり、四則演算ができなければ微分積分が理解できないことと同じで、「意思表示」「善意」といった言葉の意味がわからなければ判例や法理論を理解することはできないためです。よって、わからない用語が出てきた場合はその都度調べて、意味を知り、理解をした方がいいです。
そこで、なるべくスムーズに法律用語を理解し、勉強がはかどるようにと法律用語集を作成してみました。参照していただければ幸いです。
今回は、「や行」のページになります。
注:条文を参照したい場合は、こちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/
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や
約定担保物権(やくじょうたんぽぶっけん)
<民法>
約束によって定まる担保物権。
つまりは、約束(契約)によって担保権(物権)が成立するものです。
例えば、「あなたのマイホームを担保にするならば、お金を貸します。」という約束で成立する抵当権は約定担保物権になります。また、「あなたのロレックスの腕時計を担保にするならば、お金を貸します。」という約束で成立する質権も約定担保物権です。
ちなみに、約束ではなく法律の規定により発生する担保物権の場合は法定担保物権といいます。
ゆ
遺言(ゆいごん、いごん)
<民法>
これから死ぬ人が、残された親族へ伝えたいこと。
法律においては主に、財産の分配に関して伝えたいことになります。例えば、「俺が死んだら、財産の8割は妻へ、残りは子どもたちで分け合え。」といった感じ。
これから死ぬ人、または、死んでしまった人のことを被相続人。財産を受け取る側の親族のことを相続人と呼びます。
ちなみに、「ゆいごん」という読み方が一般的で、「いごん」というは読み方は(法律業界の)業界用語みたいなものです。
遺言書(ゆいごんしょ、いごんしょ)
<民法>
遺言の内容を書いた紙。
遺言書が間違いなく被相続人(死んだ人)が書いたものであると証明されれば、相続は遺言書に書かれた内容に沿って実行されます。
遺言書には、自筆証書遺言(民法968条)、公正証書遺言(民法969条、969条の2)、秘密証書遺言(民法970条~972条)といった種類があります。
結納(ゆいのう)
<民法>
これから結婚する男性が、結婚相手の女性の親に金銭※や物をプレゼントすること。
※結納金と呼ばれます。
日本で古来から行われている慣習となります。そして、結納が法的にどのようなものになるかというと、「婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚く(関係性を良く)する目的で授受される一種の贈与である」(昭和39年9月4日判例:裁判所ウェブサイト)とされています。
贈与(民法549条)であるということは、もし、結婚直前に「やっぱ、やめーた」と結婚が無くなった場合でも、すでに結納したものは返してもらうことができなくなるということです。だって、贈与とは無償(タダ)であげること、つまりはプレゼントですから。
よって、前述判例においても結納金の返還請求は否定されています。
有効(ゆうこう)
<民法>
【対義語】無効
何かが起こり、何か発生すること。
民法90条にて「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」としています。これは裏を返せば、「公の秩序又は善良の風俗に反しない法律行為は、有効になる」ということになります。
例えば、ギャンブルするためのお金を貸し付けるこは公序良俗に反するので無効となります(昭和61年9月4日判例:裁判所ウェブサイト)。
その結果、貸し付けた側は「貸した金返せ!」とは言えなくなり、借りた側は借金返済の義務を抱えません。つまりは、何も起きないし、発生しないということになります。
一方で、車を買うためのお金の貸し付けましたというのであればどうでしょう。それは、公序良俗に反する法律行為ではないので有効となります。
その結果、貸し付けた側は「貸した金返せ!」と言えますし、借りた側は借金返済の義務を抱えます。つまりは、金銭貸し借りの契約である消費貸借契約(民法587条)が起こり、「金返せ!」という債権と「お金返さなきゃ」という債務が発生します。
有効投票(ゆうこうとうひょう)
<公職選挙法>
【対義語】無効投票
ちゃんとカウントされる票。
選挙に行って投票をしても、ルールに従った記入をしていないとカウントされないことがあります。それは、公職選挙法に定められている無効投票(公職選挙法68条)にあたる場合です。
具体的には、「決められた用紙に書いていない」(公職選挙法68条1項)とか、「1候補のみ記入すべきところを2人記入してある」(公職選挙法68条4項)などが無効投票にあたります。
ですが、そのようなミスを犯さずにルールに従った投票をしている限りは、ちゃんとカウントされる有効投票になります。
優先弁済権(ゆうせんべんさいけん)
<民法>
「これがあれば、誰よりも先にお金を返してもえるよ( ´∀` )」という権利。
例えば、鈴木さんが、佐藤さんと田中さんの2人に1,000万円ずつ、計2,000万円借金を負っているとします。
佐藤さんがお金を貸す際には、「おまえの家を担保にしろ!」と言って、鈴木さんの家(時価1000万円相当)に抵当権を付けることにしました。
一方、田中さんがお金を貸す際には、「あなたなら、ちゃんと返してくれる信じているよ。」と言って、無担保でお金を貸してくれました。
その後、鈴木さんは事業に失敗して無一文になってしまいました。
しかし、鈴木さんには時価1000万円相当の家が残っていました。
実は、あまり経済状況が良くなかった田中さんは鈴木さんからの返済をあてにしていたので非常に困っていました。そこで、田中さんは思います。
「鈴木さんに家を売ってもらい、それでお金を返してもらおう!」
だが、時すでに遅し。
佐藤さんが抵当権を実行して家を売却、売却代金は当然、佐藤さんの下へ。結果、佐藤さんが田中さんより先にお金を返してもらえることとなったのです。
このように、複数の債権者が存在する債務者に対して、どこの誰よりも先にお金を返してもらえる権利を優先弁済権といいます。
民法上、優先弁済権を生むものは先取特権、質権、抵当権等になります。
よ
要綱(ようこう)
<行政法全般>
「行政運営のポイントはここ!」を示したもの。
例えば、「これぐらいのことをしたら行政指導をしなさい。」といった感じで、上の役所から下の役所に対して示される裁量の基準等になります。
養子(ようし)
<民法>
養子縁組をした子ども。
養子縁組(ようしえんぐみ)
<民法>
【関連用語】普通養子縁組、特別養子縁組
血のつながりが無い者どおしで親子関係を築くこと。
例えば、子どものいない夫婦が養護施設に預けられている他人の子どもを引き取り、法的に親子となるような場合になります。
養子縁組が認められれば、養子は血のつながりがある実子と同じ扱いとなり、相続権などを得ます。
要式行為(ようしきこうい)
<民法>
「ちゃんと紙に書き起こさないと有効ではないですよ」という行為(契約)。
別に、現在では紙でなくともデジタルデータでもいいのですが、要は何らの書証が無ければ成立しない行為(契約)となります。
代表的なものは保証契約で「書面でしなければ、その効力を生じない。」(民法446条2項)とされています。
なぜ、保証契約が要式行為を採用しているかというと「うかつに人の保証人とかになってしまうと後で酷いことになるかもしれないよ。だから、要式行為として慎重に契約を結びましょうね。」ということです。
養親(ようしん)
<民法>
養子縁組をした親。
予見可能性(よけんかのうせい)
<民法>
「ああなったら、こうなるよね。」と、予測ができること。
予測できるにもかかわらずやってしまうことは罪が重い。つまりは、”予見可能性があった場合には過失責任を問われ、損害賠償責任を負う”ことになります。
そして、民法416条2項において「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきで(予見可能性が)あったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」としています。
これは、鈴木さんが田中さんからモノを購入したが、田中さんの過失でモノが消滅。鈴木さんが、そのモノを転売して利益を得ようと考えていた場合に、両当事者に予見可能性がある(転売利益を得ることを予測していた)ならば、モノの購入価格だけでなく転売利益も損害賠償価格に上乗せできるということです。