行政書士試験に限らず法律の勉強をしていると、わからない用語が出てきて手が止まってしまうことがあります。そのままスルーして勉強を続けるのもひとつの手ですが、わからないものをずっと放置しておくのは後の理解度に影響を及ぼすこともあります。
なぜならば、法律は数学と同じだからです。つまり、四則演算ができなければ微分積分が理解できないことと同じで、「意思表示」「善意」といった言葉の意味がわからなければ判例や法理論を理解することはできないためです。よって、わからない用語が出てきた場合はその都度調べて、意味を知り、理解をした方がいいです。
そこで、なるべくスムーズに法律用語を理解し、勉強がはかどるようにと法律用語集を作成してみました。参照していただければ幸いです。
今回は、「ま行」のページになります。
注:条文を参照したい場合は、こちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/
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ま
・抹消登記
抹消登記(まっしょうとうき)
<民法、不動産登記法>
登記の内容に変更があったときに不要になった部分を削除すること。
例えば、住宅ローンを組むと、購入した家の登記簿に抵当権が附記(追加記載)されます。これは、ローンを組んだ人の支払いがない場合に、債権者が家を取り上げることができるようにするためです。
ですが、しっかりと住宅ローンを完済すれば債務が無くなるので抵当権は必要ありません。そこで、そのような場合には現状に合わせて家の登記簿から抵当権の附記を削除します(民法492条、不動産登記法68条参照)。
これが抹消登記です。
み
みなす
<民法>
【関連用語】推定する
「これで決めましょう」ということ。
民法886条1項においては、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」としています。
これは例えば、妻が妊娠中に夫が死亡した場合、妻だけが相続権を持つのか、お腹の子にも相続権があるのかという問題が発生します。
こんな場合においては、”既に生まれたものとみなす”として「胎児にも相続権があるということで決めましょう」という条文です。
ちなみに、みなすは”決めてしまうこと”なので基本覆ることはないのですが、民法886条2項において「胎児が死体で生まれたときは、適用しない。」としているので、この場合においては覆ることもあります。
※ちなみに、みなすと推定するの違いについてはこちら。
身分行為(みぶんこうい)
<民法>
夫・妻・子が、それぞれの立場においてだからこそ行える行為。
例えば、婚姻・離婚は夫または妻という立場であるからこそ行える行為なので身分行為にあたります。また、相続も親族(子や妻など)という立場であるからこそ行えますので、これもまた身分行為ということになります。
民事訴訟(みんじそしょう)
<民事訴訟法>
【関連用語】刑事訴訟
民間人どおしのトラブル(事件)を解決するための裁判(訴訟)。
「金を貸したけど返してもらえない」とか「離婚による慰謝料を請求する」とか、人どおしで起きたトラブルやいざこざを裁判所の判断で決着させるものになります。
民衆訴訟(みんしゅうそしょう)
<行政事件訴訟法、公職選挙法、地方自治法>
国や地方公共団体がやっていることに対して「それおかしくね?やりなおせよ!」と要求する訴訟。
具体的には、選挙の結果がおかしいから無効を訴える(公職選挙法203条以下)や、地方公共団体の税金の使い方がおかしいから訴える(住民訴訟)といったことになります。
本来、訴訟とは「行政庁の処分がおかしいから取り消せ!」という行政事件訴訟、「貸した金返さないから、返すように言ってください」という民事訴訟、「ケガを負わされたから処罰してください」という刑事訴訟、というように自分の権利・利益・身体の安全を脅かされることによって訴えることができます。
しかし、民衆訴訟は自分の権利・利益・身体の安全とは関係なく、客観的におかしなことに対して訴えることができる特殊な訴訟となります。
なので、民衆訴訟は行政事件訴訟の中でも客観訴訟(客観的な視点から訴えることができる訴訟)に分類されています。
む
無過失(むかしつ)
過失が無いこと。
無権代理(むけんだいり)
<民法>
権利が無いくせに、勝手にやってしまうこと。
例えば、子供が親所有の不動産を処分する権利も無いのに「親に頼まれたのでー、代わりにやりまーす(  ̄0 ̄)/ 」と噓をついて、他人に勝手に売却しまうような行為になります。
この場合、この売却行為は無権代理行為となります。
そして、無権代理行為は基本効力が生じません。つまりは、本人に、その効果が及ぶことがないのです(民法113条1項)。
これは、上記の場合だと親が購入者に対して「わしはそんな契約なぞ知らん(# ゚Д゚)/」といって、不動産の引き渡しを拒むことができるということです。まあ、勝手に売られたわけだから当然ですよね(;^ω^)。
ですが、本人からの追認があれば効果が生じることになります。
これは、「子供が勝手にやったことだけど、元々売ろうとしていた不動産だったし、まあいいかな(´ω`)」としてしまうことです。
無効(むこう)
<民法>
【関連用語】取消し
【対義語】有効
何も起こらないし、何も発生しないこと。
例えば、無効を定めた民法の規定として心裡留保(民法93条1項ただし書)があります。
これは、鈴木さんが「俺の1000万円の車あげるよ(*^▽^*)」といっても。それを聞いた佐藤さんは「冗談でしょう。本当にくれるわけないじゃん(-ω-;)」と思うのが通常なので、そのような意思表示は無効になるということです。
要は、”冗談で言ったことを相手がわかっているのならば、本当に車をあげなければいけない義務(引き渡し債務という法律効果)が発生するわけでもなく、何も起こらない”ということになります。
無効等確認の訴え(むこうとうかくにんのうったえ)
<行政事件訴訟法>
あれっ( ゚д゚)!それって、取消訴訟と同じじゃない。
と思われるかもしれません。その通り、無効等確認の訴えと取消訴訟は求めることが同じなのです。しかし、両者には決定的な違いがあります。
それは、無効等確認の訴えには出訴期間(行政不服審査法18条、行政事件訴訟法14条)が存在しないこと。つまりは、いつまでも処分・裁決の無効を求めることができるというわけです。
ただし、すべての処分・裁決の無効を求めることができるわけではありません(そうでなければ取消訴訟の出訴期間の意味が無いです(;^ω^))。
だから、無効等確認の訴えは出訴期間を無視してでも無効にすべき重大かつ明白な違法性※のあるもの、つまりは、とてつもなくひどい処分・裁決のみを対象にしています。
※重大明白説(昭和48年4月26日判例参照:裁判所ウェブサイト)といいます。
め
明認方法(めいにんほうほう)
<民法>
「これは俺のものだー(# ゚Д゚)/」ということをアピールする方法。
通常、不動産であれば登記、それ以外の物であれば占有によって所有権をアピールすることができます。しかし、登記や占有では所有権をアピールできない場合においては、明認方法というやり方で所有権をアピールします。
それがどのような場合かというと、鈴木さんの土地を借りて佐藤さんがリンゴの木を栽培しているような場合です。
このような場合、リンゴの木を佐藤さん自ら植えたのであれば”佐藤さんのもの”なのですが、土地の所有権は鈴木さんが持っているので見た目上は”鈴木さんのもの”とされてしまいます。
こういった事態を防ぐために明認方法を使います。具体的には、リンゴの木を削って名前も示したり、名前の入った立札をリンゴの木につけたりします。
名誉毀損(めいよきそん)
<民法>
人を侮辱する行為。
人を侮辱する度合いが強いと名誉毀損となり、不法行為(民法709条)による損害賠償責任が生じます。
では、どの程度人を侮辱してしまうとダメかというと、「社会的評価を低下させる」(平成9年5月27日判例参照)程度の行為をしてしまうとダメだとされています。
も
・持分
持分(もちぶん)
<民法>
一人あたりの分け前。
例えば、60㎡の甲土地を大輔と花子と二郎の3人で等しく分けあって共有(民法249条以下)している場合、それぞれの分け前は3分の1、つまりは20㎡というのが持分ということになります。