行政書士試験のための法律用語集(さ行)

法律用語集

行政書士試験に限らず法律の勉強をしていると、わからない用語が出てきて手が止まってしまうことがあります。そのままスルーして勉強を続けるのもひとつの手ですが、わからないものをずっと放置しておくのは後の理解度に影響を及ぼすこともあります。

なぜならば、法律は数学と同じだからです。つまり、四則演算ができなければ微分積分が理解できないことと同じで、「意思表示」「善意」といった言葉の意味がわからなければ判例や法理論を理解することはできないためです。よって、わからない用語が出てきた場合はその都度調べて、意味を知り、理解をした方がいいです。

そこで、なるべくスムーズに法律用語を理解し、勉強がはかどるようにと法律用語集を作成してみました。参照していただければ幸いです。

今回は、「さ行」のページになります。

注:条文を参照したい場合は、こちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/

※本記事はアフィリエイト広告を利用しています。

目次
    1. 裁決(さいけつ)
    2. 裁決の取消訴訟(さいけつのとりけしそしょう)
    3. 債権(さいけん)
    4. 債権者(さいけんしゃ)
    5. 債権者代位権(さいけんしゃだいいけん)
    6. 最高裁判所(さいこうさいばんしょ)
    7. 催告(さいこく)
    8. 催告の抗弁(さいこくのこうべん)
    9. 再婚禁止期間(さいこんきんしきかん)
    10. 財団法人(ざいだんほうじん)
    11. 裁判官の身分保障(さいばんかんのみぶんほしょう)
    12. 債務(さいむ)
    13. 債務者(さいむしゃ)
    14. 差止訴訟(さしとめそしょう)
    15. 詐術(さじゅつ)
    16. 三権分立(さんけんぶんりつ、さんけんぶんりゅう)
    1. 時効(じこう)
    2. 事実行為(じじつこうい)
    3. 自主占有(じしゅせんゆう)
    4. 事情裁決(じじょうさいけつ)
    5. 事情判決(じじょうはんけつ)
    6. 執行停止(しっこうていし)
    7. 執行命令(しっこうめいれい)
    8. 住民監査請求(じゅうみんかんさせいきゅう)
    9. 住民訴訟(じゅうみんそしょう)
    10. 受寄者(じゅきしゃ)
    11. 趣旨(しゅし)
    12. 主たる債務者(しゅたるさいむしゃ)
    13. 消滅時効(しょうめつじこう)
    14. 省令(しょうれい)
    15. 条例(じょうれい)
    16. 処分(しょぶん)
    17. 処分基準(しょぶんきじゅん)
    18. 処分庁(しょぶんちょう)
    19. 処分の取消訴訟(しょぶんのとりけしそしょう)
    20. 事理弁識能力(じりべんしきのうりょく)
    21. 信義則(しんぎそく)
    22. 信教の自由(しんきょうのじゆう)
    23. 審査請求(しんさせいきゅう)
    24. 審査庁(しんさちょう)
    25. 人事院(じんじいん)
    26. 申請(しんせい)
    27. 心裡留保(しんりりゅうほ)
    1. 随意契約(ずいいけいやく)
    2. 推定(すいてい)する
    1. 政教分離(せいきょうぶんり)
    2. 制限行為能力者(せいげんこういのうりょくしゃ)
    3. 制度的保障(せいどてきほしょう)
    4. 成年後見人(せいねんこうけんにん)
    5. 成年被後見人(せいねんひこうけんにん)
    6. 政令(せいれい)
    7. 責任能力(せきにんのうりょく)
    8. 設立時発行株式(せつりつじはっこうかぶしき)
    9. 善意(ぜんい)
    10. 占有(せんゆう)
    1. 相殺(そうさい)
    2. 双務契約(そうむけいやく)
    3. 贈与(ぞうよ)
    4. 相隣関係(そうりんかんけい)
    5. 即時強制(そくじきょうせい)
    6. 損害賠償(そんがいばいしょう)
    7. 尊属(そんぞく)

裁決(さいけつ)

<行政不服審査法>

審査請求または再審査請求に対する判断。

審査請求や再審査請求において審査庁が下す判断で、その判断は関係行政庁を拘束します(行政不服審査法52条1項)。この拘束力の結果として、同一事情同一理由にて処分をすることができません(ただ、例外として事情裁決があり)。

ちなみに、再調査の請求に対する判断は決定と言います。

裁決の取消訴訟(さいけつのとりけしそしょう)

<行政事件訴訟法>

受けた裁決を無かったことにするための訴訟。

例えば、「審査請求をしたけど棄却された」といった場合に、その棄却裁決を無かったことにするための取消訴訟になります。

債権(さいけん)

<民法>

【対義語債務

人(””の”人”にんべん)に対して「やれ!」と要求できる利。

具体的には、相手方に「負担を負わせるもの」「労務を科すもの」「借金の返済を要求できるもの」等となります。

債権者(さいけんしゃ)

<民法>

【対義語債務者

債権を持っている人。

債権者代位権(さいけんしゃだいいけん)

<民法>

「俺が金を貸しているあいつが、誰かに貸している金は、俺の金だー!」という権利。

例えば、鈴木さんは佐藤さんに100万円貸していましたが、佐藤さんがお金を返してくれません。そこで調べてみたところ、佐藤さんは田中さんに100万円貸していることがわかりました。

そこで、鈴木さんは田中さんに対して「佐藤に返すお金を俺に返してよ」と言いました。

このように言える権利が債権者代位権となります。

債権者代位権

最高裁判所(さいこうさいばんしょ)

<憲法、民事訴訟法、刑事訴訟法>

略称】最高裁(さいこうさい)

No.1裁判所。KING of 裁判所。

事件や問題を終局的解決に導く、司法権の最高機関になります。

基本、すべての事件・問題は最高裁より下級の裁判所(簡易裁判所、地方裁判所等)にて裁判が行われますが、その中でも最高裁判所にて裁判が行われるものは下級裁判所では解決に至らず上告(民事訴訟法311条、刑事訴訟法406条)されたものになります。

なので、最高裁にまで至る事件・問題は結構レアなケースとなります。よく、報道にて「最高裁にて・・という判決が出されました。」というニュースが流れますが、これは、レアだから報道されやすいともいえます。

裁判所階級

催告(さいこく)

<民法>

「とっとと払えよ(# ゚Д゚)/!」と催促すること。

誰かが支払いをしない場合に、債権者が支払いを促す意思表示になります。

催告をすると、時効の完成が6か月猶予されるという効果を生みます(民法150条1項)。

催告の抗弁(さいこくのこうべん)

<民法>

【関連用語】検索の抗弁

「まずはあいつ(主債務者)に言ってよー」と保証人が言うこと。

鈴木さんが佐藤さんから100万円を借り、その保証人に田中さんがなっているような保証契約において、鈴木さんが返済をしませんでした。

そこで佐藤さんは田中さんに「代わりに払ってよ」と言います。

すると田中さんは「いや、先に鈴木に請求してよ」と返しました。

このように田中さんが言える権利が、催告の抗弁(民法452条)になります。

再婚禁止期間(さいこんきんしきかん)

<民法>

【別称】待婚期間(たいこんきかん)

「女の人は離婚したら、次に結婚したい人がいても、100日間待ってから再婚してね。」という民法の規定(民法733条1項)。

なぜこのような規定があるかというと、”父親は誰なのか?”という混乱を防ぐためにあります。

例えば、花子さんが太郎さんと離婚した後、すぐさま次郎さんと再婚しました。そして、10ヶ月後に子供を産みました。となると・・

太郎と次郎、どっちの子供やねん!

となります。

この混乱を防ぐために再婚禁止期間が設けられています。

再婚禁止期間

しかしながら、この規定は「時代遅れで女性差別だ!」として問題となり(参照平成27年12月16日判例:裁判所ウェブサイト)、かつては、6か月だった長い期間が、100日に短縮された(平成28年改正)という経緯を持ちます。

そりゃそうだよね・・、今の時代DNA鑑定とかあるし(;^ω^)

財団法人(ざいだんほうじん)

<民法>

お金を法人にしたもの。

どういうことかというと、1億円の現金があるとして、その財産(お金)自体を法人とし、その法人格であらゆる活動ができるようにしたものです。

主に公益(みんなのため)になる活動が多い。

他の法人(株式会社や社団法人等)が人の集まりに対して法人格が与えられているのに対し、お金に対して法人格を与えているということです。

この財団法人の種類には、一般財団法人公益財団法人等が存在します。

裁判官の身分保障(さいばんかんのみぶんほしょう)

<憲法>

「裁判官は大切な人。だから、給料減らしたり勝手にクビにしてはいけません。」という憲法の規定。

裁判官は三権分立の一角である司法権を担っています。その裁判官を、内閣国会の裁量で冷遇したり、クビにできてしまうと三権分立のバランスが崩れます

そこで、憲法78条、80条2項等で裁判官の身分を保障し、三権分立のバランスをとっています。

債務(さいむ)

<民法>

【対義語債権

人(””の”人”にんべん)に対してやらなければいけないこと、または、その義

具体的には、相手方に対して「負担を負うもの」「労務を提供すべきもの」「借金を返済すべきもの」等となります。

債務者(さいむしゃ)

<民法>

【対義語債権者

債務を抱えている人。

差止訴訟(さしとめそしょう)

<行政事件訴訟法>

役所がやろうとしていることに「ちょっ・・ちょっと待ってー( ゚Д゚)‼」とストップをかけるための訴訟。

行政庁がするべきでない処分裁決をしようとしている場合、その行政行為をやめるように求める訴訟になります(行政事件訴訟法3条7項)。

そして、差止訴訟を提起するためには、①重大な損害を生ずるおそれがある(行政事件訴訟法37条の4第1項)、②その損害を避けるため他に適当な方法がない(行政事件訴訟法37条の4第1項ただし書)、③法律上の利益を有する(行政事件訴訟法37条の4第3項)、ということが必要とされています。

差止訴訟

詐術(さじゅつ)

<民法>

子どもが大人をだますこと。

正確には子ども(未成年者)のみならず制限行為能力者全般に適用される制度で、制限行為能力者が自身を行為能力者であると信じさせるための”だまし行為”をいいます(民法21条)。

どのようなだまし行為が詐術にあたるかは、昭和44年2月13日判例(裁判所ウェブサイト)にて「無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるとき」と判示されています。

要は、未成年者が相手の前でタバコを吸ったり、酒を飲んでいれば、「成年者なんだ・・」と思わせがち(誤信を強めがち)だよね( ´∀` )。ということです。

三権分立(さんけんぶんりつ、さんけんぶんりゅう)

<憲法>

力をつにければ、つえーやつ(独裁者)が出てくる(ち上がる)ことはないよね」という憲法のシステム。

人類は長い間、ある悩みを抱えていました。それは、「いつの時代も、つえーやつが現れて、そいつが好き勝手やるんだよなー」ということです。

これは、人間が動物であるが故の本能でもあります。「強いやつがすべてを掌握する」のは、弱肉強食である自然界では当たり前のことなのです。

実際、サル山では一番強いオスがボスザルとなり、すべてのメスを自分一人のものとします。このサル山の社会は自然界の縮図です。

同様に太古の昔から、人間界でも一番強いやつが権力を握り、自分のしたいように人々を掌握してきました。その結果、独裁者が生まれ、それ以外の人々を苦しめてきたのも”人類の歴史”です。

そこで、こんな状況を変えるべく300年ほど前にいたあるフランス人(Wekipedia:モンテスキュー参照)がこんなことを提案しました。

「だったら権力を、裁判をする権利(司法権)、法律を作る権利(立法権)、政治を運営する権利(行政権)の三つに分ければいいんじゃね。そうしたら、つえーやつの思う通りにはいかなくなるからさ!」という提案です。

後に、この提案はズバリ的中し、多くの民主主義国家がこの三権分立という憲法のシステムを取り入れました。

現在においても、このシステムは脈々と続いています。

時効(じこう)

<民法>

時の流れによって、何かを得たり、何かを失ったりすること。取得時効と消滅時効の2パターンがある。

物の得喪(得る失う)や債権債務などの権利も、時間の経過を無視して永久にとはいかないため、民法において時間で権利を得たり(取得時効)失ったりする(消滅時効)の制度を定めています。

そして、時効制度が定めらている理由(趣旨)としては、以下の3つがよくいわれます。

①永続した事実状態の尊重ずっとその状態なら、それが正しいことにしちゃおうぜ!

②権利関係の立証の困難の救済時間が経って、もうわかんないからそのままでいいんじゃね!

③権利の上に眠る者は保護に値しないなんもしない奴からは権利を取り上げちゃえ!

詳しくは、こちらを参照してください。

事実行為(じじつこうい)

<民法、行政不服審査法>

勝手または自然に発生するもの。

民法などの私法においては、意思表示に基づかないで勝手に法律効果が発生するものになります。例としては、管理者の行為によって本人の意思に基づかずに管理者に対して善管注意義務という法律効果が勝手に発生する事務管理(民法698条~702条)は事実行為にあたります。

行政法などの公法においては、行政庁の判断から自然と発生するものであり法律効果をもたないものとされます。例としては、「この地域には道路を通す必要性がある」という行政庁の判断から自然と実行される道路整備事業(公共事業)は事実行為にあたります。

自主占有(じしゅせんゆう)

<民法>

【関連用語】他主占有

「これは自分のものだ」という意識で占有している状態。

誰かから家を買い、そこに住めば、「この家は俺のものだ!」という意識で当然暮らします。これが、自主占有をしている状態となります。

ちなみに、人の物を盗んだ盗人は「これは自分のものではない」ということを認識して物を盗んでいますが、「これを自分のものにする」という意識があるので自主占有だとされています。

事情裁決(じじょうさいけつ)

<行政不服審査法>

違法だけどお咎めなしという裁決

事情判決の裁決バージョンです。審査請求または再審査請求の裁決において、「やった処分は確かに違法または不当なんだけど、混乱するから取り消さないね。」(行政不服審査法45条3項、64条4項)というものになります。

事情判決(じじょうはんけつ)

<憲法、行政事件訴訟法>

違法だけどお咎めなしという判決。

行政事件訴訟おいて、「処分(または裁決)は違法だけど裁判所で取消してしまうと混乱するよね。だから、無効とはしないよ。」(行政事件訴訟法31条1項前段)という判決になります。昭和33年7月25日判例(裁判所ウェブサイト)では、「行政庁が出した認可を取り消すと混乱するから、認可は取り消さないよ。」と判示しています。

また、憲法でもこの法理論が適用されています。昭和51年4月14日判例(裁判所ウェブサイト)では、「一票の格差が大きい選挙だったけど、無効にすると混乱するからそのままにしておくね。」といった判決になりました。この考え方を憲法では事情判決の法理と呼んでいます。

執行停止(しっこうていし)

<行政不服審査法、行政事件訴訟法>

役所の処分や手続をストップさせること。

行政庁の処分・手続が違法または不当である場合は、一定の条件の下その執行を停止することができます(行政不服審査法25条2項~4項、行政事件訴訟法25条2項)。

ですが、「処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」 (行政不服審査法25条1項、行政事件訴訟法25条1項) とされているため、行政庁の処分・手続は止まらないのが基本になります(執行不停止の原則)。

なので、処分・手続を止めることができる執行停止は例外的な場合となります。

執行命令(しっこうめいれい)

<憲法>

【関連用語】委任命令

役所の運営手順と形を決めるもの。

具体的には、申請の流れ(運営手順)や申請用紙の様式(形)などです。委任命令と同じく法律で規定されていない細目を決める法規命令となります。

ただ、委任命令との違いは、委任命令は法規を規定するので「私人の権利義務に関係する」ものだが、執行命令は手順と形だけの「私人の権利義務には関係はしない」ものとされます。

執行命令

住民監査請求(じゅうみんかんさせいきゅう)

<地方自治法>

「地方自治体が無駄遣いや変なお金の使い方をしてるよ!」ということをお目付け役に言うこと。

具体的には、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担があると認めるときに監査委員(お目付け役)に対して、監査(チェック)を求める(地方自治法242条1項)ものとなります。

この住民監査請求を事前に行っておくことことが、住民訴訟を提起するための要件となります(地方自治法242条の2第1項)。

住民訴訟(じゅうみんそしょう)

<地方自治法>

地方自治体の無駄遣いや変なお金の使い方を裁判所に訴えること。

地方自治体の財産管理に対して、違法又は怠った部分がある場合に訴訟を提起できます。

ただし、やみくも訴訟を提起できるものではなく、事前に住民監査請求(地方自治法242条)を経ていることが訴訟を提起できる要件となります(住民監査請求前置主義、地方自治法242条の2)。

受寄者(じゅきしゃ)

寄託を参照。

趣旨(しゅし)

<法律全般>

その法律が作られた理由・目的。

すべての法律とその条文には制定された趣旨(理由・目的)があります。

例えば、民法93条1項本文では「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。」としています。

その理由・目的は、「表意者が冗談で言ったこと(真意ではないことを知ってした意思表示)でも、言われた相手は信じるよね。だから、それは有効(その効力を妨げられない)ということにしよう。」というものになります。

このように、趣旨を知ることが法律を知るということになります。

主たる債務者(しゅたるさいむしゃ)

<民法>

【別称】主債務者(しゅさいむしゃ)

保証契約において金を借りている張本人。

この張本人が、債権者に借金を返済をしない場合には保証人が代わりに返済をすることになります。

消滅時効(しょうめつじこう)

<民法>

全部チャラになる時。または、チャラになるまでの期間。

権利を行使しないでいると時効制度により、権利が消滅することです。

具体的には、「10万円を鈴木さんに貸していたが、特に催促することなく10年間が経過してしまった。」という場合において、鈴木さんが債権の消滅時効(民法166条2項)を援用、つまりは「時効を使いまーす(* ̄0 ̄)/ 」と主張すれば、10万円がチャラになり、返してもらえなくなってしまうという制度になります。

省令(しょうれい)

<国家行政組織法>

各省(総務省とか財務省など)の大臣が出す命令。

条例(じょうれい)

<地方自治法憲法>

普通地方公共団体が定める独自ルール。

基本ルールである法律は国会で定められますが(憲法41条)、それだけでは不十分な場合があります。それは、地方において独自の事情が存在することが多いため、地方の事情に即した独自ルールを作る必要があるためです。

そこで、各都道府県および市区町村において独自ルールである条例を定めることができます(地方自治法14条1項、憲法94条)。こうすることで、法律ではカバーしきれなかった地方独自の事情に即したルールを作ることができます。。

ただし、国会で定めらる法律は全国で均一に適用されるべき絶対的なルールですから、法律に反する条例を定めることはできません(地方自治法14条1項)。

処分(しょぶん)

<行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法>

国民に権利を与えたり義務を課したりする役所の行為。

処分は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政手続法2条2号、行政事件訴訟法3条2項)と法令に規定され、 昭和39年10月29日判例(裁判所ウェブサイト)では、「その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義されています。

つまりは、国民に何らかの影響を与えてしまう行政庁の行為ということになります。逆にいえば、影響が無ければ処分にあたらないということでもあり、処分にあたるか否か(処分性)が行政事件訴訟では問題となります。

また、直接処分を行った行政庁のことを処分庁といいます。

処分基準(しょぶんきじゅん)

<行政手続法>

これやったらダメ!やぶったら罰を与えるよ!」という基準。

具体的には、、「バスやタクシー等を運営する会社が、ドライバーの飲酒検査をせずに飲酒運転をさせた場合には、100日間自動車の使用は禁止。」といった基準です(国土交通省ウェブサイト参照)。

行政手続法2条8号ハにて「不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」と定義されています。

処分庁(しょぶんちょう)

処分を参照。

処分の取消訴訟(しょぶんのとりけしそしょう)

<行政事件訴訟法>

受けた処分を無かったことにするための訴訟。

例えば、「役所に申請を出したけど拒否された」といった場合に、その拒否処分を無かったことにするための取消訴訟になります。

事理弁識能力(じりべんしきのうりょく)

<民法>

「こうすると、ああなるよね」がわかる能力。

自身の行動により、いかなる結果となるかがわかる能力ともいえます。例えば、「5キロ歩けば、疲れてお腹が空く」といった感じです。

この事理弁識能力は、法律的に小学校低学年程度で備わる※とされていて、この能力の有無により制限行為能力者が法的に有効意思表示をしたか否かを判断する指標となっています。

※諸説あり。

信義則(しんぎそく)

<民法>

「人の信頼や期待を裏切るようなことをしちゃいけないよ」ということ。

信義誠実の原則(信義に従い誠実に行動する原則)であり、それを略して信義則と呼びます。民法1条2項に規定されています。

そして、人の信頼や期待を裏切るようなことが具体的にどのようなものかは事案によって異なります。

そこで例をあげると、「新しいスマホを購入したが最初から大きく傷が付いていた。そこで、”傷が付いていたら新しいものと取り換える”といったことは契約内容には盛り込まれていないが、別の新しいものに取り換えるように請求できる。」といったことが信義則になります。

新品のスマートフォン購入すれば、購入者は当然「傷の無いピカピカなスマホが渡されるはずー(≧▽≦)♬」と信頼・期待するわけですが、もし、傷だらけスマホを渡されたらどうなるでしょう。

新しものと交換しやがれー(# ゚Д゚)/

となるのは請け合いです。

このように、相手方が当然に持っているだろう信頼や期待を裏切った場合、もう一方の相手方は補填や賠償をしないといけないということです。

ただ、この信義則は抽象的な概念なので、やたらと「信義則に反するぞー(# ゚Д゚)/」とは主張できません。何でもかんでも「信義則ガー」となってしまうと収拾がつかなくなってしまうからです。

なので、信義則の主張は最終手段的な必殺技であると考えられており、法律の規定によっては解決できないような場合に限り適用されるといった原則になります。

信教の自由(しんきょうのじゆう)

<憲法>

「どのような宗教を信じてもいいし、信じなくてもいいよ( ´∀` )」という自由。

昔から、特定の宗教を信じる人たちが力を持ち、他の宗教を信じる人たちを弾圧するといった人権侵害がよく起こってきました。

そこで憲法では、信教の自由を”守るべき重要な人権だ!”として、憲法20条に規定しています。

審査請求(しんさせいきゅう)

<行政不服審査法>

役所の判断に対して、「あの、それおかしいんですけど」という不満を、上の役所にいうこと。

行政庁の処分不作為に対しての不服を上級行政庁へ申し立てることです(行政不服審査法2条、3条)。

例えば、市の役所の処分に不服があれば県の役所に、県の役所の処分に不服があれば国の役所に、というのが原則になります(例外あり、行政不服審査法4条参照)。そして、審査請求をする上級行政庁のことを審査庁と呼びます。

ちなみに、処分(やったこと)だけでなく不作為(やらなかったこと)も審査請求の対象になるのがポイント。

審査請求

審査庁(しんさちょう)

<行政不服審査法>

審査請求を参照。

人事院(じんじいん)

<国家公務員法、地方公務員法>

公務員が正しくあるようにと、その管理・運営をしている行政機関。

公務員は、憲法で「全体の奉仕者」と定められ、職務の遂行に当たっては中立・公正性が強く求められます。このため、国家公務員法に基づき、人事行政に関する公正の確保及び国家公務員の利益の保護等に関する事務をつかさどる中立・第三者機関として、設けられたのが人事院です。とされています。

出典:人事院ホームページ(https://www.jinji.go.jp/syoukai/index.html

申請(しんせい)

<行政手続法>

役所に”お願い”を出すこと。

行政庁に対して、自身に何らかの権利・利益を付与するようなお願いを届け出る行為となります。行政手続法2条3号にて「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分」と定義されています。

例えば、飲食店を始めたい場合は「飲食業の許可」を保健所にお願い(申請)する必要があり、お願い(申請)が通れば「食品衛生責任者」という飲食店を営業できる権利・利益を得ることができます。

心裡留保(しんりりゅうほ)

<民法>

「相手方が冗談で言ったことをどうするの?」を定めた民法の規定。

例えば、鈴木さんが売る気もないのに冗談で「この車君に売るよ」と佐藤さんに言った場合、基本的には有効となり(93条1項本文)売買契約が成立します。

しかし、佐藤さんが「鈴木さんあの車めちゃくちゃ大切にしていたのに売るわけないじゃん!冗談でしょ。」という感じで、明らかに相手方の意思表示が冗談であるのがわかるという状況であれば無効となります(93条1項ただし書)。

冗談で言った側と受けた側とでのバランスを調整する民法の規定です。

随意契約(ずいいけいやく)

<地方自治法>

役所が選んだ人(企業)と結ぶ契約

国や地方公共団体が一般企業と契約を結ぶ場合、通常は入札(一般競争入札)により決定されますが、入札によらず国や地方公共団体が選んだ相手と結ぶ契約になります。

ですが当然、行政庁側が恣意的に選んで相手側に権益を与えることがないように「指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。」(地方自治法234条2項)として縛りがかけられています。

推定(すいてい)する

<民法>

【関連用語】みなす

「いったん、こういうことにしておきましょう」というもの。

民法762条2項においては、「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」としています。

これは例えば、夫婦が離婚することとなり、財産を分け合うことになったのだけれども、2人共同で買ったマンションがあり、どちらの所有になるのかわからない状態であったとしましょう。

こんな場合においては、”共有に属すると推定する”として「いったん、2人の共同所有ということにしておきましょう」という条文です。

ちなみに、推定するは”いったんそうしておく”だけなので、マンションの購入資金のほとんどを夫が支出したという事実が出れば、夫の所有へと変更もできます。

つまりは、推定するは暫定処置ということになります。

ちなみに、推定するとみなすの違いについてはこちら

政教分離(せいきょうぶんり)

<憲法>

治(法律)と宗は、けて、して考えようね」という考え方。

なぜこのような考え方になるかというと、例えば、ある国の、多くの国民が信じる宗教において、

牛肉を食べるのは絶対禁止‼

という教えがあったとします。そうすると、

んじゃ、法律でも牛肉を食べるのは禁止にしてしまえー(# ゚Д゚)/

と、なりがちです。でも、その国の他の宗教を信じる人たちにとっては、

いや、うちの宗教では「牛肉を食べちゃいけない」なんてないんだけれど・・

という不満が出ます。

このようなことになるのは、不平等で民主的ではありません。よって、宗教的な考え方を政治(法律)に反映するのはやめておきましょうとなり、この考え方が政教分離です。

しかしながら、ほんとんどの国の文化・風習・価値観は、その国の大多数の人々が信じている宗教の影響を受けているため、政治と宗教を完璧に分けるのは難しいとも言われています。

制限行為能力者(せいげんこういのうりょくしゃ)

<民法>

「ちょっと、この人だと難しいことはできないかな(;^ω^)」と法律的に判断される人。

具体的には、認知症を患ったご老人や、知識・経験の浅い未成年者等になります。

そして、このような人たちが不動産の売買などをすることは難しく、もしやってしまえば、相手方に足元を見られ、不利な契約を結ばされる可能性が高いです。

そうならないように、民法では制限行為能力者ではできないことを規定しています(民法9条、13条、17条参照)。こうすることによって、制限行為能力者を守ろうとしているのです。

ちなみに、(未成年者を除く)制限行為能力者は、被補助人(軽度)→被保佐人(中度)→成年被後見人(重度)、という感じで3つにランク分けされています。

制限行為能力者

制度的保障(せいどてきほしょう)

<憲法>

ルール(制度)を作りると、その効果で人権を守る(保障する)ことができるという仕組み。

例えば、出版物を取り締まる検閲(憲法21条1項前段)を禁止するルールを作れば、人々は「へんなものを出版したら取り締まりを受けるかも:;(∩´﹏`∩);:」なんてことは気にせずに自由に出版して自身の意見を表明でき、結果、表現の自由という人権が守られるという効果が発生します。

このような仕組みが制度的保障であり、上記以外にも、信教の自由(20条)が政教分離原則を、学問の自由(23条)が大学の自治を、財産権(29条)が私有財産制を保障しているとされています。

成年後見人(せいねんこうけんにん)

<民法>

成年被後見人の世話をする人。

契約などの法律行為が何もできない成年被後見人の代わりに色々とやってあげる人になります。

ただ、それを利用して成年被後見人の財産を使い込んだりする可能性もあります。そこで、成年後見人にはしっかりとした人を家庭裁判所が選ぶようにしています(民法843条)。

成年被後見人(せいねんひこうけんにん)

<民法>

「この人が法律行為(契約など)のような難しいことをするのは絶対無理!」と判断される人。

制限行為能力者の中で最も重度の症状と判断される人で、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(民法7条)と定義されています。

不動産や車の売買などの大きな契約をすることはできず、それらは成年後見人が代わりやります。

ただし、お小遣いの範囲内で普段の買物などをすることはOK(民法9条ただし書)です。

政令(せいれい)

<憲法>

内閣が発する命令。

命令とはいえ法律に準ずる効力を持ちます。具体的にどのような政令が発せられているかはこちら(総務省ホームページ)を参照してください。

内閣が政令を発することができる根拠は憲法にあります(憲法73条6号)。そして、行政法において政令は法規命令の一種にカテゴライズされます。

責任能力(せきにんのうりょく)

<民法、刑法>

「自分がやっていることは法律を破っている」ということを認識する能力。

民法では、責任能力の有無が不法行為の成立に影響し(民法712条、713条)、刑法では、責任能力が無いと判断される人は、刑罰を免れたり、罪を軽くしてもらえます(刑法39条、41条)。

設立時発行株式(せつりつじはっこうかぶしき)

<会社法>

会社はじめるにあたって発行する株式

あらかじめ株式を発行して、そこで集まった資金を、立ち上げたばかりの会社の初期運営費用にあてる。という目的で発行されます。

善意(ぜんい)

<民法>

【対義語】悪意

知らなかったこと。

その事実を知らずに法律行為を行った場合を言います。典型的なのは、通謀虚偽表示による仮装譲渡(民法94条2項)にて、移転登記された不動産をその事実を知らずに(思で)取得してた場合などです。この場合、善意の者は保護される(不動産を取得できる)ことになります。

Aさんが所得隠しのため所有している甲不動産を、Bさんと話し合って、Bさんの所有としてしまうこと。こうすると、Bさんの財産ということになり、Aさんは強制執行される(取り上げられる)ことがなくなる。

通謀虚偽表示と善意の取得者
民法94条2項と善意の取得者

よく、「普段の生活で使う”善意”とはニュアンスが違うので気をつけましょう」といわれます。

占有(せんゆう)

<民法>

「ああ、あれはあの人の物だな」とわかる状態。

どういうことかというと、ある人がバイクにまたがり道路を走行していれば、見た人は「ああ、あのバイクはあの人のものだな」と思うのが通常です。

しかし、もしかしたら、バイクは盗難品で運転している人は窃盗犯かもしれません。

でも、見た目上、バイクを所持して利用していれば、「占有をしている状態」と法律では判断されます。

相殺(そうさい)

<民法>

打ち消しあうこと。

例えば、A商店が「すみません、今月は経営が苦しいので20万円だけ資金を貸しつけてもらえませんか」といって、B会社からお金を借りたとします。一方、B会社はA商店から商品を納入しており、その代金が20万円ありました。

こんな時、A商店が20万円を返済した後に、B会社が20万円の商品代金を支払うのは煩わしいことです。

そこで、お互いの債権債務を打ち消し、「お互い支払い¥0としましょう。」というのが相殺になります。

相殺

双務契約(そうむけいやく)

<民法>

【対義語】片務契約

両方に負担がかかる契約

例えば、「コンビニでお茶を買う」みたいな売買契約(民法555条)などで、コンビニの店員は”お茶を引き渡す”という負担がかかり、客には”お金を払う”という負担が両方にかかります。

このような契約がおおよそ一般的であるため、世の中の大半の契約が双務契約であるともいえます。

贈与(ぞうよ)

<民法>

プレゼント。

誰かが誰かに無償、つまりはタダで物を与えるもの(民法549条)で、片務契約となります。

贈与には、定期贈与(民法552条)、負担付贈与(民法553条)、死因贈与(民法554条)といった特殊な贈与も存在します。

相隣関係(そうりんかんけい)

<民法>

民法が規定しているご近所トラブル解決法。

民法209条から238条にて規定されています。一つ例をあげると「お隣さんから流れてくる水をせき止めるな!」(民法214条)という感じ。

全体を通して割とざっくりした規定のため、建築基準法や慣習法による補完がされたりします。

即時強制(そくじきょうせい)

<行政法全般>

非常時に、国民を無理やり従わせること。

緊急事態時に公益のため行われる行政行為で、「感染症の拡大により感染した人を病院に隔離する」といった行為になります。

この場合、感染した人は病院に引きこもらなければいけない義務はもとよりありません。なのに、無理やり従わせることになります。ゆえに即時強制は「行政上の義務の賦課を介さずに国民の身体または財産に強制を加えるもの」と定義されています。

損害賠償(そんがいばいしょう)

<民法>

「被害を受けたから、金払え(# ゚Д゚)/」という請求(債権)。または、「被害を与えたから、お金を払わなきゃ(;´Д`)」という義務(債務)。

「仕事を依頼していた人が仕事をやらずに被害を受けたので、その損害の賠償を請求する」という債務不履行による損害賠償(民法415条)や、「自動車を運転していたところ、人をひいてケガ(被害)を負わせたので損害を賠償する義務を負った」といった不法行為による損害賠償(709条)が代表的なものになります。

尊属(そんぞく)

<民法>

【対義語】卑属

血のつながりがある、上の世代のこと。

具体的には、父親・母親、祖父・祖母、叔父・叔母、等になります。