行政書士試験に限らず法律の勉強をしていると、わからない用語が出てきて手が止まってしまうことがあります。そのままスルーして勉強を続けるのもひとつの手ですが、わからないものをずっと放置しておくのは後の理解度に影響を及ぼすこともあります。
なぜならば、法律は数学と同じだからです。つまり、四則演算ができなければ微分積分が理解できないことと同じで、「意思表示」「善意」といった言葉の意味がわからなければ判例や法理論を理解することはできないためです。よって、わからない用語が出てきた場合はその都度調べて、意味を知り、理解をした方がいいです。
そこで、なるべくスムーズに法律用語を理解し、勉強がはかどるようにと法律用語集を作成してみました。参照していただければ幸いです。
今回は、「は行」のページになります。
注:条文を参照したい場合は、こちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/
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は
パターナリズム
<憲法>
国が国民対してする良い余計なお世話。
例えば、国が国民に対して「飲酒は体に悪いから禁止にする!」といえば、国民側は「そんなもの余計なお世話だーー(# ゚Д゚)/飲ませろー」となります。
なぜならば、このような国家の干渉は憲法が保障する「基本的人権の尊重」に反するものであり、国民に対する不当な干渉となります。
ですがこれが、「未成年の飲酒は、未成年の心身の発達によくないから禁止する!」というのであればどうでしょう。国民側は「まあ、そうだよね(*-ω-)ウンウン」となります。
この場合は、未成年者の自由を制約していますが余計なお世話とは言い切れません。むしろ、いい干渉の仕方。つまりは、国が国民に対してする良い余計なお世話となります。
このように、国からの人権制約ではあるけれど、合理的で良い干渉であり許されるものをパターナリズムといいます。
パブリックコメント
意見公募手続を参照。
パンデクテン法
<憲法>
最初に基本の説明、次に、細かい話になるという法律の構成。
具体例としては日本の民法がこれにあたります。民法は総則・物権・債権・親族相続の4つジャンルで構成され、民法の総則の部分が理解できないと物権や債権、さらには親族相続の分野も理解できないという構成をしています。
このような構成が、パンデクテン法となります。
ちなみに、民法を学ぶ際は”総則と債権を同時並行で学ぶ”みたいなやりかたがおすすめです。
ひ
被告(ひこく)
<民事訴訟法、行政事件訴訟法>
【対義語】原告
原告から裁判所に訴えられた人(または組織)。
行政事件訴訟では、「被告は行政機関」「原告は国民」という形が基本的になります。行政機関同士の訴訟である機関訴訟(行政事件訴訟法6条)では「行政機関も原告」になりえますが「被告は常に行政機関」です。
卑属(ひぞく)
<民法>
【対義語】尊属
血のつながりがある、下の世代のこと。
具体的には、子、孫、等になります。
非嫡出子(ひちゃくしゅつし)
<民法>
【関連用語】嫡出子
結婚していない男女の間に生まれた子供。
男Aと女Bとの間に子Cが生まれましたが、AとBは法律上の婚姻関係を結んでいません。こういった場合のCが非嫡出子にあたります。
そして、非嫡出子は認知(民法779条)をされなければ、法律上の親子関係が成立しません。
被保佐人(ひほさにん)
<民法>
「この人が法律行為(契約など)のような難しいことをするのは結構厳しいよね」と判断される人。
制限行為能力者の中で中程度の症状と判断される人で、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(民法11条)と定義されています。
被保佐人は、不動産売買などの大きな契約の際には、「やっていい?」と保佐人にお伺いをたてる(同意を得る)必要があります(民法13条1項3号)。
被補助人(ひほじょにん)
<民法>
「この人が法律行為(契約など)のような難しいことをするのはちょっと厳しいかなー」と判断される人。
制限行為能力者の中で最も軽度の症状と判断される人で、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(民法15条1項)と定義されています。
「不動産の売買などの大きな契約はできなさそうだなー」と判断される被補助人は、補助人に「やっていい?」とお伺いをたてる(同意を得る)必要があります(民法17条1項)。しかし、被保佐人よりは、その範囲(同意を得るべき事柄)は少ないです(民法17条1項ただし書)。
表現の自由(ひょうげんのじゆう)
<憲法>
なんでも言っていい自由。
「どのような発言・発表もしようとも、自由にしていいよ」と憲法が保障している権利(憲法21条1項)。
なぜ、憲法がそのような権利を保障しているかというと、表現の自由がとても重要な人権であるためです。そして、その重要性の理由は以下2つにあるとされます。
- 表現の自由が保障されることにより、人は自由な意見を他の人から受け、自身も自由な意見を持つことができる(自己実現の価値)。
- 表現の自由が保障されることにより、人は様々な意見を他の人から受け、政治的な判断(選挙で誰を選ぶか、または、自分自身が政治家になろうといった判断)を下すことができる(自己統治の価値)。
この2点は、民主主義が成立するうえで基本になるもので大変重要です。
実際に、民主主義が成立していない、または、機能していない国(独裁国家など)では、表現の自由はかなりの制約を受けています(「勝手なこと言うんじゃねえぞ!」と国家から圧力をかけられている状態にある)。
ふ
・不作為 ・不作為庁 ・不作為の違法確認訴訟 ・普通地方公共団体 ・不利益処分
不作為(ふさくい)
<民法、刑法、行政不服審査法、行政事件訴訟法>
何もしないこと。
民法では、何もしないことを義務付けるもの(不作為債務)になります。例えば、マンションの居住条件として「騒音は出すな!」といった義務のことです。
刑法では、何もしないことが刑罰にあたるものになります。例えば、親の育児放棄は保護責任者遺棄等(刑法218条)になります。
行政法に関しては、不作為庁を参照。
不作為庁(ふさくいちょう)
<行政不服審査法、行政事件訴訟法>
何もしない役所。
行政不服審査法・行政事件訴訟法において、申請をしたのに何も応答をしない、何の処分もしないような行政庁を不作為庁と定義しています(行不服審査法3条括弧書、行政事件訴訟法3条5項)。
ちなみに、申請があったのに何もしない不作為庁に対して不服申し立てや訴訟ができる理由は、行政庁が申請を無視して握りつぶすことを防ぐためです。
不作為の違法確認訴訟(ふさくいのいほうかくにんそしょう)
<行政事件訴訟法>
役所の不作為に文句をいう訴訟。
「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟」(行政事件訴訟法3条5項)となります。
行政庁がそもそも何もしない場合には、国民の権利利益の救済が難しくなります。なぜならば、処分・裁決が無い場合には取消訴訟を提起することができませんから。そこで、行政庁の不作為の場合にも訴訟を提起できるようにしたのが不作為の違法確認訴訟です。
普通地方公共団体(ふつうちほうこうきょうだんたい)
<憲法、地方自治法>
都道府県・市町村単位の地方公共団体。
現在、普通地方公共団体は都道府県の中に市町村があるという2段階制(広く行政を行う都道府県と地域に密着した行政を行う市町村の2重構造)となっています。
不利益処分(ふりえきしょぶん)
<行政手続法>
役所から損になる処分を受けること。
行政手続法2条4号にて「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分」と定義されています。具体的には、過料などの金銭的な損失を受けたり、許可の剝奪といった権利的な損失を受けたりすることです。
国民に損失をもたらすものであるため、不利益処分における審査基準の設定・公表などは法的義務(行政手続法5条1項、3項)として、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図っています。
へ
弁済(べんさい)
<民法>
【同義語】履行
お金を払ったり、売った物を渡したりすること。
例えば、借金を返済したり、売り渡した不動産を引き渡して登記を移転する行為になります。要は、債務者が債務を消滅させる行為です(民法473条)。
また、債務者自身でなくとも他の人間が弁済をすることもできます(第三者の弁済:民法474条)。
片務契約(へんむけいやく)
<民法>
【対義語】双務契約
一人(片方)だけに負担がかかる契約。
通常の契約である双務契約では、両当事者が債務を負担し両方に負担がかかるものですが、片務契約では片方のみに負担がかかるというものになります。
例えば、「土地を子供に譲る」みたいな贈与(民法549条)においては、親は”土地を引き渡す”という負担がかかりますが、子供は”もらうだけ”で一切負担がかかりません※。つまりは、契約当事者の片方である親のみが債務を負担することになるのです。
※ちなみに細かいことをいえば、贈与税等がかかる場合もあるので”一切負担がかからない”とはいえない部分もありますが・・(;^ω^)
その他、使用貸借契約(民法593条)なども片務契約にあたります。
ほ
法規命令(ほうきめいれい)
<憲法>
【関連用語】行政規則
行政機関が定める法律。
「えっΣ(゚Д゚)、法律は国会で作るもの(憲法41条)でしょ。行政機関が作っちゃうのは駄目じゃないの。」といいたくなるところですが、現実的には国会がすべての法条を定立するのは難しく(時間と人員と能力の制限があるからね(;^ω^))、大枠を法律で、細かいところは法規命令で定めるというのが一般的となります。
法人(ほうじん)
<民法>
法律が定めたバーチャルな人または人の集団。
例えば、鈴木さんと佐藤さんの2人で法人を設立したとします。ここで設立された法人は実在の人ではなく、仮想(バーチャル)なものとなります。ですが、人と同じように物の売り買いなどの取引を法人名義ですることができるのです。
要は、実在する人とほぼ同じ権利が与えられているものが法人となります。
ちなみに、法人に対して実在する人のことを自然人と呼びます。
法曹(ほうそう)
<法律全般>
弁護士・裁判官・検察官という3つの職業のこと。
要は、司法試験に合格し、法律の専門家として飯を食っている人たちの総称を指します。
法定担保物権(ほうていたんぽぶっけん)
<民法>
法律によって定まる担保物権。
どういうことかというと、法律の規定によって自然に生じるような担保権(物権)ということです。
例えば、「自分の家を売ったけど相手が金を払わないから、家は渡しません。」という留置権は、法律の規定(民法295条1項)によって自然に生じる担保権なので法定担保物権になります。
ちなみに、法律の規定ではなく約束(契約)によって発生する担保権のことは約定担保物権といいます。
法律上の争訟(ほうりつじょうのそうしょう)
<裁判所法・憲法>
「法律が守ってくれると言ったものは裁判所でも守ります!逆にそうでないものは裁判所は判断しません!」ということ。
これは、「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であつて、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるもの」(板まんだら事件昭和56年4月7日判例:裁判所ウェブサイト)と定義されています。
例えば、宗教上の教義に関する裁判である上記判例の場合、
原告:「宗教法人に寄付したけど、その金の使い道おかしくね。だから返せよ!」と原告が訴えたのだが、
被告:「いやいや、これは我が宗教の教えに照らせば正しい使い道ですよ」と反論。
原告: ならば、「裁判所さん、 宗教の教えに照らして正しいか否かの判断をお願い致します!」
裁判所:知るか(# ゚Д゚)/!法律とは関係なくね?
ざっくりいうとこんな感じとなり、この裁判所が判断できないという理由付けが「法律上の争訟にはあたらないから」というものになります。
保佐人(ほさにん)
<民法>
被保佐人の世話をする人。
事理を弁識する能力が著しく不十分である被保佐人が大きな契約などをする場合に、それを「やっていいか」「ダメか」を判断する人になります。「やってもいい」場合には被保佐人に、
いいよ( ´∀` )
と同意を与えます(民法13条参照)。
保佐人は成年後見人と同様に家庭裁判所によって選ばれます(民法876条の2第1項)。
募集設立(ぼしゅうせつりつ)
<会社法>
【関連用語】発起設立
発起人以外にもお金を出してもらうという会社の立ち上げ方。
発起人が一部の設立時発行株式を買い、残りを他の人(引受人)に買ってもらうという会社設立方法です(会社法25条1項2号)。要は、
発起人:いいビジネスのアイデア思いついたんだけど、俺だけじゃ初期費用まかなえないから、誰かお金出してー!
ということ。
保証契約(ほしょうけいやく)
<民法>
ある人がお金を払わなかった場合に、代わりに払う人を用意する契約。
例えば、鈴木さんが佐藤さんから100万円を借りたが、鈴木さんは借金を返すことができませんでした。そんな時に、田中さんが代わりに佐藤さんへ100万円払うという契約です。
この保証契約は、佐藤さん(債権者)と田中さん(保証人)との間だけで成立し、鈴木さん(主債務者)を無視しても成立するのが特徴。
保証人(ほしょうにん)
<民法>
主債務者が債権者にお金を払えなくなった時に、代わりに払うことになる人です。
補助人(ほじょにん)
<民法>
被補助人の世話をする人。
事理を弁識する能力が不十分である被補助人ができそうにもないことをしようとしている場合に、それを「やっていいか」「ダメか」を判断する人になります。「やってもいい」場合には被補助人に、
いいよ( ´∀` )
と同意を与えます(民法17条参照)。
補助人は保佐人と同様に家庭裁判所によって選ばれます(民法876条の7第1項)。
発起設立(ほっきせつりつ)
<会社法>
【関連用語】募集設立
発起人が必要なお金を全部出すという会社の立ち上げ方。
発起人が設立時発行株式を全部買うという会社設立方法です(会社法25条1項1号)。要は、
発起人:初期費用は全部俺に任せちゃってー!
ということ。
発起人(ほっきにん)
<会社法>
「会社はじめよーぜヾ(*´∀`*)ノ !!」って言った人。
発起人は、いわば会社の企画・発案者です。そして、誰が発起人であるかは、必ず定款に記載する必要があります(絶対的記載事項:会社法27号5号)。
また、一人の人間でなくとも複数人や法人であっても発起人になることができます。