行政書士試験に合格した後、行政書士会に登録して業務に邁進するのも良いですが、少し立ち止まって、別の資格取得を目指すのも悪くはありません。
なぜならば、他の資格を取得することにより、業務の幅が広がり稼ぎやすくなるからです。
また、行政書士試験に合格すれば、行政書士試験で得た知識を足掛かりに色々な資格にも挑戦ができます(中には挑戦できないものもありますが(;^ω^)”行政書士資格の取得を目指してほしい士業5選:薬剤師”参照)し、合格もしやすくなります。
そこで、行政書士業務や試験との相性の良い資格6選を紹介します。
そして、ただ紹介するだけではなく、この6つの資格を、取得難易度により「易」「中」「高」の3つのカテゴリーに分けて紹介します。
どれもメリットが大きい資格ばかりですので、行政書士試験合格者の方は是非検討してみてください。
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難易度「易」のおすすめ資格
難易度「易」の資格は、行政書士試験に合格した方なら、それなりの努力で合格でき、かつ、有用な資格です。
それが、宅建士と簿記2級になります。
宅建士
不動産業を営むための必須資格が宅建士となり、なかでも不動産仲介業をやる際には、宅建士の資格を持つ人間がいなければ違法※にもなります。
※不動産仲介業を営むためには、従業員の5人に1人が宅建士の有資格者でなくてはならない(宅地建物取引業法第三十一条の三の一項、宅建業法施行規則十五条の五の三)。
<行政書士業務との親和性とメリット>
宅建士資格の大きな魅力は、何と言っても不動産業を営むことができる点にあります。
不動産業界は大きなお金が動く業界ですから、行政書士事務所と兼務で運営していけば、稼げること間違いないですし、行政書士が運営する不動産屋ということで、顧客からの信頼も厚くなるでしょう。
また、不動産業を営むということをしなくても、もとより行政書士の業務として扱える宅建業の登録申請※の仕事をした場合、宅建士試験で学んだ知識が大きな武器になります。
※宅建業の登録申請は、報酬単価が高い傾向にあるのでおすすめの行政書士業務である反面、この業務においては宅建士試験で一番勉強する宅地建物取引業法の深い理解が不可欠でもある。
また、宅建士として重要事項説明※の仕事をスポット的に受けて収入を得ることも可能です(例えば、土日に宅建士の有資格者がいなくて外注するような不動産業者もいるので、そこで収入が得られるということです)。
※重要事項説明とは、不動産賃貸借契約を結んだ賃借人に対して、契約内容の説明をすることです。これは、不動産仲介業者の法的義務になっており、重要事項説明を行えるのは宅建士のみとなっています(宅地建物取引業法第三十五条)。
<取得のためには>
宅建士試験を受験することになります。
宅建士試験は、4肢択一式の問題が50問出されます。そして、例年の合格ライン点数は35点前後、つまりは7割ほどの得点が要求されます。そして、合格率は例年17%(6人に1人)ぐらいに調整されています。
7割というとハードルが高いように思えますが、民法が10問出題されるので、行政書士試験合格者にとって実質40問分の勉強さえすればよく、”行政書士試験が5肢択一なのに対し、宅建士試験は4肢択一”ということも考えれば、7割という数字はけっして難しくはないでしょう。
そして、宅地建物取引業法(宅建業法)、借地借家法、不動産登記法、はたまた都市計画法など、見慣れない不動産関係の法律に最初は戸惑いますが、論点を絡めているような、ひねった問題は少なく重要条文を丸暗記すれば解ける問題も多めなので、それなりに勉強すればクリアできる範囲です。
また、宅建士試験は例年10月に実施されるので、行政書士試験の合格発表を1月に受けてから約9か月ほどの時間があるのです。
時間的な余裕も十分だね
よって、総合的には行政書士試験合格者にとっては「易」な資格となり、宅建士試験のテキストと問題集を買って独学すれば十分にゲットできる資格といっていいでしょう。
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簿記2級
会計資格の定番で、簿記3級から簿記1級の三段階になっており、その中間が簿記2級となります。
<行政書士業務との親和性とメリット>
顧客と顧問契約を結び、顧客の会社の帳簿(日々の売上や支出)付けを代行している行政書士は多くいます。
そして当然、帳簿付けをするわけですから最低限の会計知識が必要となります。それが簿記の知識です。
さらには、自身が運営する行政書士事務所自体の会計も行わなければいけないですから、簿記を取得した方がいいというよりは、行政書士をやるならば簿記は必須知識(資格)ともいえます。
”親和性がある”とか、”メリットがある”とか、それどころじゃない必須なものということです。
<取得のためには>
日商簿記検定を受験するのがスタンダードです。簿記は国家資格ではなく民間資格となります。
簿記は会計系の資格なので、法律系資格である行政書士試験とは趣を異にしますが、知識の習得のみなので難易度はそれほど高くはありません。
基本的には、まず簿記3級を取得をして、そこから2級に挑戦するのがスタンダードですが、いきなり2級にも挑戦が可能です。
勉強は書籍ですれば十分どころか、最近では下のようなyoutubeチャンネルまであり、これを利用しての勉強でも十分であるといえるでしょう。
そして、簿記は資格取得というよりは、簿記の勉強による会計知識の習得が重要なので、わざわざ試験料を払って日商簿記を受験する必要は無いかもしれません。
別に、行政書士のような独占業務が与えられた国家資格ではないですしね(;^ω^)。
なお、簿記2級の上に簿記1級の資格がありますが、1級まで取得する必要はないでしょう。2級の知識で十分に実務上対応可能だからです。
難易度「中」のおすすめ資格
難易度「中」の資格は、行政書士試験合格に費やした時間と労力を、また同じぐらい費やさなければ取得できない難易度のものになります。
それが、社会保険労務士と土地家屋調査士の資格になります。
社会保険労務士
いわゆる、社労士(しゃろうし)と呼ばれる資格で、雇用・労働関係の専門家となります。
<行政書士業務との親和性とメリット>
昔から、社労士と行政書士の業務は親和性が高いと言われています。
なぜならば、行政書士は許認可や補助金の申請を請け負うといった単発の仕事が多いですが、社労士は企業の労務関係を請け負うため、企業と顧問契約を結んで付き合うことが多くなります。
なので、社労士資格と行政書士資格の両方を持っていれば、
①行政書士として申請の仕事を企業から請け負おう➪②その企業の労務関係もついでに担う➪③結果、企業と顧問契約を結ぶことに成功‼ヾ(*´∀`*)ノヤッター
という運びになりやすいためです。
繋がるんだね
士業としては、企業と顧問契約を結ぶことは経営を安定させることにつながるので、非常に大切です。社労士の資格があれば、それを達成しやすくなるのです。
<取得のためには>
社会保険労務士試験を受験することとなります。受験資格として、大学卒業や労務実務経験等の要件が必要とされていますが、行政書士試験合格で受験資格要件を満たすので問題はありません。
そして、社会保険労務士試験は、労働法関連や社会保険関連の法令が出題されます。これらは、行政書士試験ではほとんど学んでいない分野ですし、合格率の低さ(例年5%~8%ほど)から考えると初学者ならば難易度「高」にしてもいいくらいの難易度となります。
しかし、行政書士試験合格者ならば、「法律知識の下地が出来上がっている」ことと、「社会保険労務士試験は選択・択一問題だけで、記述式の問題は出題されない」ということの2つを考えれば、行政書士試験合格者にとっては難易度「中」に収まるでしょう。
スマホ一つでWEB講義を受けられるようなものを利用したりして、勉強を進めていけば、十分に合格が見えてくるでしょう。
土地家屋調査士
「土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査及び測量を行う専門家」(日本土地家屋調査士会連合会HPより抜粋)になります。
要は、土地を測量した結果を、登記表示に反映させることができる法的専門家になります。
<行政書士業務との親和性とメリット>
一番のメリットは、行政書士の鉄板業務である農地転用※、いわゆる農転(のうてん)において有用であることです。都市部の郊外で、田畑と宅地が入り混じるよう地域で行政書士をやられている方ならば、農転の機会は多いはずです。
※農地転用についてはこちらを参照。
その農転手続きをする場合には、ざっくり二段階の手続を踏むこととなります。そして、その手続の前半が行政書士の業務で、後半が土地家屋調査士の業務となります。
①農転の申請➪行政書士の業務
②転用する土地の測量と登記表示の変更➪土地家屋調査士の業務
なので、土地家屋調査士の資格を取得すれば一気通貫に農転業務を完了させることができ、結果、顧客満足度を上げることができます。
よって、農転の業務をすることが多い行政書士、および、農転をメインでやりたい行政書士であれば、ぜひとも獲得したい資格でもあります。
<取得のためには>
土地家屋調査士試験を受験することになります。
ですが、行政書士試験に合格していても、「測量なんて一切勉強したことがない!」という方にとっては、結構な難易度になります。出題される科目の多くが測量に関するものだからです。
しかしながら、救いの女神である民法が出題されます。また、宅建士試験や司法書士試験をかじったことがある方であれば、不動産登記法の出題も救いになるでしょう。
それでも、測量関係を一から勉強するのは非常に厳しいことですが、「試験科目に民法が含まれている」ことと、「合格率が10%前後ある」ことを考えれば、難易度は「中」に収まるでしょう。
ちなみに、「一級・二級建築士の勉強をしたことある」および、「測量関係の仕事をしたことがある」なんて方がおられましたら、迷わずに受験しましょう。
難易度「高」のおすすめ資格
難易度「高」の資格は、仕事をしながら合格することは不可能ではないが非常に厳しいという難易度のものになります。
それが、司法書士と弁護士の資格になります。
司法書士
不動産登記や商業登記を代理できる登記のスペシャリスト。かつ、簡易裁判における代理、および、各種法的書面の作成ができる弁護士に次ぐ法律のスペシャリストでもあります。
<行政書士業務との親和性とメリット>
「会社設立を請け負い、法人登記まで完了させる」とか、「相続業務を請け負い、相続不動産の登記まで完了させる」といった具合に、業務を大幅にグレードアップしてくれます。
そしてこれは、顧客に対して”ワンストップでサービスを提供できる”ということでもあり、顧客からの信頼度を大幅に高めることにつながります。
また、「司法書士の先生が行政書士資格を取る、または、行政書士資格者を雇い、申請業務にまで業務の幅を広げる」といった場合も多々あるので、行政書士資格と司法書士資格の相性の良さに関しては、疑いの余地がないものと言えるでしょう。
<取得のためには>
司法書士試験を受験するのが一般的です※。
※司法書士試験合格以外でも司法書士になる術は存在するが、その点は割愛。
司法書士試験は、民法・会社法の出題数が多く、かつ、難易度が高いです。
さらには、行政書士試験では勉強してこなかった刑法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・供託法・不動産登記法・商業登記法と出題される法令は多彩で、実際に登記簿を作成するという記述試験もあるうえに、筆記試験(7月実施)合格後には口頭による試験(10月実施)まで控えています。
そして、合格率は例年5%ほど、よって非常に難易度は高いです(;^ω^)。
とある資格試験予備校の講師は、司法書士試験の難易度に関してこう評していました。
「1日8時間の勉強を1年半続けることができれば、合格できるレベルに達する」
聞いただけで吐き気がしそう・・
しかし、行政法は出題されないものの、見慣れた憲法・民法・会社法は出題されるので、それらをさらにレベルアップしつつ、他の法令科目もマスターしていく感じでいけます。
つまりは、行政書士試験の延長線上にあるのは間違いないので、努力次第で合格を勝ち取ることができるでしょう。
弁護士
法律系資格のトップ、いや、日本の国家資格の中でも医師免許と並ぶキングオブ資格になります。
<行政書士業務との親和性とメリット>
弁護士資格は頂点の資格ですから、法務はもちろんのこと財務・人事・労務、はたまた裁判と、なんでもござれ※です。
※実際には、現在の弁護士の多くはなんでもやるというよりは、「企業法務専門」とか「刑事事件専門」といった具合に、どこかに専門特化している先生方が多いようです。
ですから、行政書士業務を行っていた方で、専門でやっていたジャンルがある方ならば、それを完璧なものとする。または、大幅なグレードアップを果たすことができます。
例えば、「行政書士権限ではできなかった相続業務のすべてを担う」とか、「行政書士業務で申請だけを行っていたところを審査請求・行政事件訴訟までこなす」といった感じです。
そして、もはや弁護士になるということは、行政書士業務との親和性うんぬんよりも、行政書士から弁護士に生まれ変わると言ったほうがいいでしょう。
<取得のためには>
司法試験に合格後、さらに司法修習(詳細はWekipedia:司法修習を参照)を経ることによって弁護士資格を取得できます※。
※司法試験合格以外でも弁護士になる術が存在するが、非常に難易度が高く、ほとんどの人には非現実的なので割愛。
現在、司法試験に合格するルートは2つ存在します。
①法科大学院に入学し、卒業後5年以内に司法試験クリア。
②予備試験に合格し、合格後5年以内に司法試験クリア。
①の法科大学院ルートは時間と費用が多くかかるので、行政書士試験合格者にはおすすめできません。なので、目指すべきは②の予備試験ルートということで、これについて説明します。
予備試験は、合計で9つの法令科目と一般知識問題が出題され、それらをクリアしすると合格です(詳細はWikipedia:司法試験予備試験を参照)。
簡単に言いましたが、かなりのボリュームがあり、しかも、予備試験自体の難易度は「本チャンの司法試験よりも難しい」と言われているほどで合格率は4%(要は、25人に一人ほどΣ(゚Д゚))です。
よって、クリアするのは至難の業なのは言うまでもありません。
ちなみに、「法科大学院からの司法試験受験者」と「予備試験からの司法試験受験者」との間で本チャン司法試験の合格率※にかなりの開きができており、問題にもなっています。
※例年、法科大学院卒が4割、予備試験合格者が9割ぐらいの合格率。
ですが、これの裏を返すと、予備試験をクリアしてしまえば、ほぼ司法試験合格ともいえるので、人生をかけて、全力で予備試験にコミットする価値があります。
とは言いつつも・・
でも、司法試験合格なんて夢のまた夢では?
と考える方もいるかもしれません。
でも!
実は、”行政書士試験と司法試験は相性がいい”と言われています。
なぜならば、行政書士試験の法律科目(憲法・行政法・民法・商法)と、司法試験の法律科目(憲法・行政法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法+選択法律科目)は丸かぶりなためです。
そのため、登記関係の法律を余計に学ばなければいけない司法書士試験より、行政書士試験の方が司法試験との相性がいいとも言われています。。
実際私は、司法試験の択一問題を演習した結果、行政書士試験に合格することができました(詳しくは、行政書士試験攻略法を参照)。なので、その親和性を実感した人間の一人でもあります。
そして、「法科大学院生※時代に行政書士試験を受験※して落ちたが、司法試験には合格した」とか、「行政書士試験合格後、予備試験ルートで司法試験に合格した」という人が結構存在しています。
※法科大学院生(司法試験合格を目指して大学院に通っている方たち)は、在学中の腕試しとして受験科目丸かぶりの行政書士試験を受験することが多い。行政書士試験が難易度の割に10%以上の高い合格率がある理由でもある。
つまりは、行政書士試験で勉強してきたことを広げて、続けていけば、達成できる可能性のあることであり、
行政書士試験の合格者にとっては、司法試験合格は夢物語では無い‼
ということです。
十二分に挑戦する価値があるでしょう。
中でも一番のおすすめは?
さて、ここまで色々な資格を見てきましたが、中でも一番のおすすめは何でしょう?
この点、1年ほどの短期で見れば、成果の出やすい宅建士資格がおすすめです。
でも、3年ほどの中期計画であるならば、社労士・司法書士資格の方が業務の幅を広げるので、これもまた、おすすめとなります。
さらには、5年以上の長期計画であるならばだんぜん弁護士となります。資格取得後のリターンがかなり大きいからです。
しかし、あえて言うならば・・
行政書士業務に全力でコミット
が、個人的には一番のおすすめとなります。
なぜならば、行政書士1本でやっている先生方の中には、弁護士よりも稼いでいるような先生方もおられるからです。要は、ビジネスマンとしての努力と才覚があれば資格のクラスは関係なくなるのです。
また、行政書士であれば行政書士会へ会費を納め、社労士であれば社労士会へ会費を納めるというように、複数資格は基本コストアップしがちです。なので、コストアップ以上に売り上げなければマイナスにもなります。
そして、行政書士ビジネスである程度の成功をしてしまえば、”労務を扱いたいので社労士資格を持つ人間を雇う”とか、”登記を扱いたいので司法書士資格を持つ人間を雇う”といったこともできます。
つまりは、自身が複数資格を取得せずとも、人の力も借りれるようになるので、複数資格の取得にこだわる必要はなくなります。
なので、行政書士試験に合格したのであれば行政書士業務に邁進するのがベストと個人的には考えています。
ただし、「行政書士業務がうまくいっていないので何とか打開したい!」とか「業務で特化しているジャンル(相続業務など)においては行政書士の権限だけでは不十分!」。
その結果、「人を雇うところまではいかないよ😓」と感じているのであれば、カンフル剤として、ダブルライセンス・トリプルライセンスを考慮してもいいでしょう。